米エネルギー省、石油戦略備蓄から2,600万バレルの市場売却決定

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月15日

米国エネルギー省は2月13日、2023年会計年度(2022年10月~2023年9月)中に石油戦略備蓄(SPR)から2,600万バレルを売却すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。エネルギー省は2022年3月から10月にかけて、SPRから1億8,000万バレルを放出したが(2022年10月20日記事参照)、2015年超党派予算法(Bipartisan Budget Act of 2015)などによって、2023会計年度に2,600万バレルを市場売却することは既に法制化されていたため、今回の発表はそれに基づいたものとなる。

今回の売却入札は2月28日までに、販売契約は3月8日までに行われる予定だ。テキサス州のビッグヒル貯蔵施設から最大600万バレル、ルイジアナ州のウェストハックベリー貯蔵施設から最大2,000万バレル、合計で最大2,600万バレルを4月1日から6月30日の間に放出するとしている。

なお、2月3日時点の米国のSPR総在庫量は約3億7,000万バレルと、1983年12月以来の低水準にあるため、エネルギー省は今後、今回のSPR放出時の売却価格よりも低い価格で原油を買い戻し、その収入でSPRを再補充することを目指すとしている。また、米国で2022年12月29日に成立した2023年度(2022年10月1日~2023年9月30日)本予算(2022年12月26日記事参照)では、2027年度までに予定されていたSPRからの市場売却を中止する条項が盛り込まれているほか、これまでのSPR放出を補充するかたちで、2023年2月の受け渡し分として最大300万バレルをSPRとして買い戻すとエネルギー省は発表しており(2023年1月4日記事参照)、今後の有事などに備えて、歴史的な低水準にまで落ち込んでいるSPRの引き上げを急いでいる。

米WTI原油先物価格は、直近の2月第1週時点で1バレル(約159リットル)当たり76.51ドルと、2022年6月のピーク時(120.43ドル)から4割弱下落しているものの、同年12月第2週頃からは横ばい状態で推移している。また、ガソリンの全米平均小売価格は、直近の2月14日時点で1ガロン(約3.8リットル)3.41ドルと、2022年6月のピーク時(5.02ドル)から下落しているが、1カ月前の3.29ドルからはやや上昇している。さらに、2月14日に発表された消費者物価指数でもガソリン価格は前月比で3カ月ぶりに上昇に転じている(2023年2月15日記事参照)。ガソリン価格は人々の生活負担に直結するのはもちろん、消費者物価指数を算出する際にガソリンを含むエネルギー価格が消費支出全体の約7%を占めると見なされていることから、物価全体の動向にも大きく影響を与え得るため、今後もSPRの動向には留意が必要だ。

(宮野慶太)

(米国)

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