2023年はハイテク分野への投資減少の予想、政治も停滞の恐れ

(イスラエル)

テルアビブ発

2023年01月25日

2023年のイスラエルは、一部の産業が難しい局面を迎えることが見通されている。政治面でも、ネタニヤフ政権の安定運営に向けた課題が山積みとなっている。

経済の発展を牽引してきたハイテク業界は、正念場を迎えるとみられる。2021年に史上最高水準を記録したイスラエルでのハイテク分野への投資は、2022年には一転して停滞することが予想されていた(2022年12月23日記事参照)。イスラエルのNPOスタートアップ・ネーション・セントラルが1月に公開したレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、ハイテク分野企業の2022年の総投資額は2021年から大幅な落ち込みを見せており、約42%減少の155億ドルとなった。最も影響の大きかったサイバーセキュリティー分野に至っては、前年比60%減となったという。

1月10日付「CTECH」紙によると、スタートアップ・ネーション・セントラルのCEO(最高経営責任者)アビ・ハッソン氏はスタートアップ企業への投資について、2022年と同様の減少傾向が2023年、2024年も続くことが予想されると述べている。また、12月26日付の同紙によると、スタートアップでレイオフが激化するという見方もある。

政治については、「イスラエル史上最も右寄り」と呼ばれ、宗教勢力の影響が強いといわれるベンヤミン・ネタニヤフ首相の現内閣は、イタマル・ベン・グビール国家治安相が「神殿の丘」を訪問したことなどによる周辺アラブ諸国の反発や国際社会からの懸念に加え(2023年1月12日記事参照)、副首相兼内務相兼保健相に任じられていたアリエ・デリ氏が過去の脱税による有罪判決を理由に最高裁から罷免を要求されるなど、発足当初から複数の問題を抱えている状況だ。加えて、1月に入って、国会による最高裁への関与を拡大する司法制度改革案に反対する民衆が10万人以上の規模でデモを行うなど、新政権による強硬な政策への反発も高まっている。

現地報道では、こうした状況がハイテク分野を含むイスラエル企業への諸外国からの投資を抑制する懸念もあるとしており、経済的な観点からも今後の政権運営が注目される。

(太田敏正)

(イスラエル)

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