ハイテク分野への投資は鈍化の兆し

(イスラエル)

テルアビブ発

2022年12月23日

イスラエルの2022年を振り返ると、新型コロナ禍から従来どおりの生活に戻ったが、ハイテク分野への投資は鈍化の兆しが見られた。

イスラエル観光省によれば、外国からイスラエルへの渡航者は2022年通年で約250万人になることが予想されており、過去最高だった2019年の450万人には届かないものの、堅調な回復を見せている。他国との往来に関する規制は順次撤廃され、10月9日からはイスラエル渡航時の入国用フォームも廃止、ほぼ自由に出入国できる状態となった。

人の往来が復活した一方で、経済を牽引してきたハイテク分野には不安な動きも見られる。イスラエルのハイテク分野に特化したリサーチ会社IVCが10月に公開したレポート「イスラエル・テックレビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、2022年の第1四半期から第3四半期までのイスラエルのハイテク分野に対する投資総額は123億ドルで、歴代最高の対イスラエル投資額を記録した2021年同期の合計投資額と比較すると30%減少している。本調査を進めたIVCのシニアデータアナリストであるマリアナ・シャピラ氏は現地紙(10月24日)に対し、「この動きには、世界経済の下降トレンドが影響するとともに、2021年に過剰に高まった評価額が過去数年間と同レベルまで落ち着いてきたことによる部分もある」と述べている。

こうした状況のなかでも、日本企業との協業・連携という観点では、2022年も一定数の事例が生まれている。ジェトロが公開情報を基に調査したところ、日本企業によるイスラエルのスタートアップ企業への出資や協業・業務提携は2022年12月20日時点で少なくとも58件あり、足元では大手IT企業の富士通の研究開発拠点設立も発表されている(2022年12月6日記事参照)。イノベーションを生むためのシーズ探索や研究開発拠点として、イスラエルが日本企業から重要視されている。

イスラエルのハイテク分野は、2021年は過去最高の投資額を記録して勢いがあったが、2022年は下降トレンドで、2023年の浮沈について注目が集まる。

(太田敏正)

(イスラエル)

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