バイデン米政権、輸送部門の脱炭素化に向けた青写真発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月20日

米国のバイデン政権は1月10日、輸送部門の脱酸素化を目指す戦略計画「輸送の脱炭素化に関する米国の青写真」を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同計画は、2050年までに輸送部門の温室効果ガス(GHG)排出量をゼロとすることを目標に、インフラ投資雇用法とインフレ削減法に基づき、エネルギー省、運輸省、環境保護庁、住宅都市開発省が共同で策定したもの。米国の産業別GHG排出量を見ると、輸送部門は3割以上と最多を占める一方、排出削減の取り組みは進んでいない(2023年1月12日記事参照)。目標の達成に向けてより具体的な計画を示すことで、政府一丸となって取り組みを後押ししたい意向だ。

青写真では、全ての輸送手段について「野心的だが達成可能」な目標を設定したほか、2050年までの10年ごとの計画を提示した(添付資料表参照)。このうちライトビークル(注1)については、2030年までに販売される新車の50%をゼロエミッション車(ZEV)(注2)にし、中型・大型トラックに関しても、2030年までに30%、2040年までに100%をZEV化する目標を掲げた。さらに、これまで目標値を定めていなかったオフロード車や鉄道に関しても、目標を設定するための研究開発にリソースを集中させることをうたった。船舶や航空分野のゼロエミッションの達成や、低排出燃料へ移行するための詳細なタイムラインなども盛り込んでいる。また、代替燃料を輸送するパイプライン整備について記述すなど、広範な計画を示した。

青写真ではほかにも、徒歩や自転車による利便性を高めるため、職場や学校、ショッピング施設などが居住地域の近くに戦略的に設置されるようコミュニティーデザインや土地利用を支援することや、手頃で利用しやすい輸送の選択肢を広げることで、自動車の排出量を減らす計画も盛り込んだ。政府高官はメディアに対し「輸送部門の中でも、自動車が脱炭素化するまでに必要な長いリードタイムを考えると、今すぐ積極的に始めなければならない」(米国政治専門紙「ポリティコ」電子版1月10日)と述べており、政府による迅速な対応が注目される。

(注1)乗用車と小型トラック〔バン、スポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラック〕。

(注2)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)。

(大原典子)

(米国)

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