中央アジア3カ国、水力発電所を共同建設へ

(カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン)

タシケント発

2023年01月16日

カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン3カ国のエネルギー担当閣僚は16日、キルギスの首都ビシケクで、「カンバル・アタ第1水力発電所」の共同建設プロジェクトに関するロードマップに署名した(カザフスタン・エネルギー省ウェブサイト16日)。

カンバル・アタ第1水力発電所はキルギス中央部ナリン川に建設される予定。1986年に建設構想が立ち上がったが、ソ連崩壊で計画が中止。2008年からロシアの援助で建設事業が再開したが、その後、同資金の使途不明問題が起こり、融資が停止、頓挫していた。ダムは堤高256メートルのロックフィルダム(注)で、総貯水量54億立方メートル。発電容量1,860メガワット、年間平均出力は56億キロワット時とされる。建設費用は約29億ドルで、完成すればキルギス国内最大の水力発電所となる予定。

写真 ナリン川の水力発電所建設予定地付近(ジャラル・アバド州トクトグル地区、2022年7月ジェトロ撮影)

ナリン川の水力発電所建設予定地付近(ジャラル・アバド州トクトグル地区、2022年7月ジェトロ撮影)

キルギス政府は2022年6月から、建設のための道路整備を始めている(キルギス大統領ウェブサイト2022年6月8日)。2024年から発電所の建設を開始し、2028年の部分的運転開始を目指す。電力はキルギス国内のほか、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどに供給される予定。

今回署名されたロードマップには、a.実現可能性調査報告書の作成、b.入札の手順と諸条件、c.3カ国による合弁会社設立(持株比率:キルギス34%、カザフスタン33%、ウズベキスタン33%)などに関する取り決めが含まれる(アザティックラジオ2023年1月8日)。

国際河川での水力発電所建設には、国家間の政治的、経済的利害関係が生じやすく、灌漑用水を必要とするカザフスタン、ウズベキスタンは過去、上流域でのダム建設に難色を示してきた。しかし近年、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタンの電力不足が深刻化しており、タジキスタンとウズベキスタンが水力発電所の共同建設を開始するなど(2022年6月17日記事参照)、流域国全体で必要な建設資金を分担し、水資源を共同で活用しようという動きがみられる。

(注)ダムの形式の1つ。岩石や土砂を積み上げて建設する型式のダム。

(増島繁延)

(カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン)

ビジネス短信 b945e4a7b74272a4