米環境保護庁、PM2.5の大気中への排出濃度の強化基準案を公表

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月10日

米国環境保護庁は1月6日、微小粒子状物質(PM2.5)の大気中への排出濃度基準の強化案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

PM2.5とは、大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5マイクロメートル(µm、1µmは1mmの1,000分の1の長さ)以下の非常に小さな粒子を指す。その成分には、炭素、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩のほか、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムといった無機元素などが含まれ、その大きさは髪の毛の太さの30分の1と粒子が非常に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、ぜんそくなどへの悪影響や肺がん発生リスクの上昇などが懸念されている。PM2.5には、工場や自動車などの排ガスから直接排出される一次生成粒子と、工場や家庭などで燃料を燃焼する際に排出される硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが大気中で光やオゾンと反応して生成される二次生成粒子の2種類がある。

今回の強化案では、PM2.5の大気中への排出濃度基準について、現行の1立方メートル当たり12マイクログラム(µg、年間平均)から9~10µgに引き下げることを提案している。EPAによると、基準を1立法メートル9µgまで引き下げた場合、2032年までに最大4,200人の早期死亡と27万日分の労働損失を防ぐことができ、公衆衛生上の純利益は合計で430億ドルに上る可能性があるとしている。同基準は官報での公開後、60日間のパブリックコメントを受け付ける予定で、2023年後半に最終決定する予定としている。

PM2.5の年間排出規制については、日本では空気1立方メートルあたり年間平均15µg以下となっているほか、EUでは年間制限値である現行の空気1立方メートル当たり25µgから、2030年に同10µgに引き下げる改正案が審議予定となっており(2022年11月2日記事参照)、今回の基準案は国際的にみても厳しい水準となっている。こうした厳しい基準案に対し、製造業やセメント、石油産業などの業界団体は反発しており、ポートランド・セメント協会のマイク・アイルランド会長は「提案されているPM2.5排出基準の強化案では、排出基準を満たすことは技術的にも経済的にも不可能だと考える」と述べるなど(ロイター1月6日)、最終決定までには紆余曲折も予想される。

(宮野慶太)

(米国)

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