2023年成長率予測をプラス成長に修正、サプライサイド政策などを強化

(ドイツ)

ベルリン発

2023年01月27日

ドイツ連邦政府は1月25日、年次経済報告書を採択、公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書では、2023年の実質GDP成長率は2022年10月の秋季予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますより0.6ポイント上方修正され、0.2%とプラス成長の予測に転じた(添付資料表参照)。ガスや電気の価格上限制度(価格ブレーキ、2022年12月6日記事参照)をはじめとするエネルギー危機に対するさまざまな支援措置、ドイツ経済の順応性や回復力の高さ、大幅なエネルギー節約などの現状を踏まえたもの。2024年は1.8%のプラス成長を見込む。

消費者物価指数上昇率は2023年も6.0%と高水準が続くと予測するが、2022年の7.9%よりは低下するとし、トレンドの反転が始まっているとした。2024年は2.8%まで落ち着くと見込んでいる。

今回の発表について、ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は「景気後退が生じたとしても、より短く、より穏やかなものになると予想している」と述べた。

こうした前向きな流れは、ifo経済研究所の景況感指数でも見て取れる。同研究所が25日に発表した1月の景況感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2015年=100)は90.2(前月比1.6ポイント増)、今後6カ月の見通しを示す期待指数は86.4(3.2ポイント増)と、ともに4カ月連続で改善した。クレメンス・フュースト所長は「ドイツ経済はより自信を持って新年を迎えている」と述べた。

加えて、消費者物価指数上昇率は既に2022年11月以降は低下傾向にあるほか(2023年1月17日記事参照)、消費者物価指数の先行指標的な意味合いで捉えられることもある生産者物価指数上昇率(工業製品)も、2022年9月は前年同月比45.8%、10月は34.5%、11月は28.2%、12月は21.6%と、4カ月連続で低下している。

連邦政府による経済財政政策の重点分野

このように、ドイツ経済は以前の予測と比べれば、状況が改善しているが、それでも、2023年の実質GDP成長率は2022年の1.9%を大幅に下回る見通しだ。また、長期的な国の発展について国民の自信も失われつつあり、アレンスバッハ世論調査研究所の1月発表の世論調査によると、ドイツが今後10年間に順調に発展すると確信している国民は31%にとどまる。

このため、今回の年次経済報告書では、経済・財政政策の重点分野として、(1)エネルギー供給の確保、変革の加速、(2)競争力の強化、変革をもたらすサプライサイド政策の確立、(3)戦略的主権の強化、通商政策の再編を掲げ、これらに取り組むことで、報告書のタイトルでもある「新たな繁栄」を目指すとしている。

(日原正視)

(ドイツ)

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