ガス・地域熱・電気の上限価格設定を閣議決定、2023年1月分料金から実質的に適用

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2022年12月06日

ドイツ連邦政府は1125日、ロシアのウクライナ侵攻を受けた天然ガスの卸売価格高騰を背景に、天然ガスと地域熱と電力の上限価格設定に関する法案を閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。上限価格の適用は202331日~2024430日だが、20231月分と2月分にも遡及(そきゅう)して適用される。

ガスと地域熱に関しては、一般家庭と中小企業〔年間消費量150万キロワット時(kWh)以下〕は、20229月時点で算定済みの年間予測消費量の80%について、1kWh当たりでガスは0.12ユーロ、地域熱は0.095ユーロの上限価格(いずれも税など含むグロス価格)とする。残りの20%の消費量は、どちらも契約上の価格で支払う。なお、実際の年間消費量が予測年間消費量の80%より節約できた場合は、80%を下回った部分についてはそのガス不使用分を契約上のガス価格で計算した金額相当が返金される。この返金措置は、ガス節約への強いインセンティブになるとの考えだ。

大企業(年間消費量150kWh超)と病院については、ガスの使途(エネルギー源または原材料)を問わず、2021年の消費量の70%に相当するガスについて、1kWh当たり0.07ユーロを上限価格(税など含まないネット価格)とする。地域熱に関しては、20229月時点の消費量を基に予測する年間消費量の70%相当を、1kWh当たり0.075ユーロを上限価格(税など含まないネット価格)とする。

ガスと地域熱の上限価格は、全国では約25,000社の企業と1,900の病院が対象となる計算。なお、ガス火力発電所は対象外だ。

電力に関しては、一般家庭や中小企業(年間消費量3kWh以下)は、前年の消費量の80%相当を、1kWh当たり0.4ユーロを上限価格(税など含むグロス価格)とする。実際の消費量が前年消費量の80%を下回った場合、差額がガスと同様の計算方式で返金される。大企業(年間消費量3kWh超)は、2021年の消費量の70%相当の電力量に対して1kWh当たり0.13ユーロを上限価格(税など含まないネット価格)とする。

再エネ発電などに超過利潤税を導入、電力価格上限制度の財源に

電力の上限価格設定制度の主な財源は、EU規則(2022103日記事参照)に基づき、遡及して202291日から2023630日、最長2024年末まで実施される電力販売に対する超過利潤税だ。ガス火力発電所の発電コストの大幅な上昇に比較すると、再生可能エネルギー・廃棄物・原子力・褐炭火力発電所は発電コストが低く、電力の販売収益が高くなる。そこで、これらの電力の販売では、販売収益上限を超える部分に課税(負担率90%)する。なお、出力1メガワット以下の小規模発電所は課税対象外だ。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ)

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