シンガポール・中国間の航空便数、慎重に回復へ

(シンガポール)

シンガポール発

2023年01月12日

シンガポールのS・イスワラン運輸相は1月9日の国会で、中国の航空便について、新型コロナウイルスの感染状況とチャンギ空港の受け入れ能力を考慮した上で、「慎重に便数を回復させる」方針を強調した。中国が同月8日から入国時の隔離措置の撤廃など感染対策を緩和したのを受け、シンガポールや中国の航空各社はシンガポール民間航空庁(CAAS)に、両国間の航空便増便を申請している。

イスワラン運輸相によると、シンガポールと中国の航空便は2022年10月末時点で週25便だったのが、同年12月中旬に同36便、2023年1月9日時点で同38便に増えた。両国の航空便数は現在(2023年1月9日時点)、新型コロナウイルス流行前の10%未満にとどまる。中国からの航空便の乗客の6割以上は、シンガポール国民、永住権者(PR)と就労査証などの長期ビザ保有者だという。中国からシンガポールへの新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の来訪者数は362万7,000人と、国・地域別で最大だった(全来訪者の約19%)。

シンガポール保健省は2022年12月30日に、中国からの来訪者に対して既存の感染防止策を適用し、水際対策を強化しない方針を明らかにしていた(2023年1月6日記事参照)。オン・イエクン保健相は2023年1月9日の国会で、中国の来訪者に対する各国の水際対策について、(1)ASEANの多くの国や中東、アフリカ、南米、ニュージーランドは水際対策に変更なし、(2)オーストラリアやカナダ、ベルギー、日本、英国、米国などは渡航前の検査を100%義務付け、(3)シンガポールとスペインは、ワクチン接種完了者(注)か、そうでない場合は渡航前の検査の義務付けと、3つに分類できると指摘した。オン保健相は、「(シンガポールの)水際対策は、最も厳格でも最もリベラルでもなく、その中間だ。(中国からの渡航者を)別扱いとしないのは、われわれのデータを見る限り重症者が(中国に限らず)どの国・地域からも発生する可能性があるからだ」と説明した。

運輸省は保健省と共に、海外の新型コロナウイルスの感染動向を注視しており、必要に応じて感染対策を強化するとしている。例えば、世界的に感染者が最近、増えているのを受けて、乗客と対面する航空職員と清掃人全員について、個人防護具(PPE)の着用義務を強化していた。

(注)ワクチン接種完了者の定義はシンガポール移民局(ICA)の入国情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのページを参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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