外国投資家の議決権を無効にできる大統領令が発効

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2023年01月24日

ロシアのプーチン大統領は117日、大統領令第16号「幾つかのロシア企業の意思決定にかかる時限的措置について」に署名、即日発効した。これにより、特定分野の企業での意思決定で、外国投資家の意向が反映されなくなるリスクが出ている。

同大統領令は、特定分野のロシア企業に対し、議決権を有する株主や役員など意思決定機関構成員が日本を含む非友好国・地域(注1、以下、非友好国)籍の場合、それら関係者の参加なしに当該ロシア企業の意思決定を行うことを20231231日まで可能とするもの。以下の条件を全て満たすロシア企業が対象となる。

a. 活動分野が電力・エネルギー、機械製造、貿易のいずれかであること

b. 当該ロシア企業の所有者など(注2)に対し、非友好国側が何らかの制限措置を導入していること

c. 当該ロシア企業の授権資本(株式)の持ち分における非友好国関係者の割合が50%以下であること

d. 2022年の売り上げが1,000億ルーブル(約1,900億円、1ルーブル=約1.9円)以上であること

これらの条件を全て満たす場合、当該ロシア企業のロシア側株主や役員は、非友好国関係者の議決権、また定足数に関する規定などを考慮せずに、ロシア側関係者のみで議決などを行うことが可能となる。

今回の措置を導入した背景には、ロシア側企業関係者が、外国投資家や役員が対ロ経済制裁などを背景に投資先ロシア企業の意思決定に参加せず、それにより当該ロシア企業の活動に悪影響を及ぼすことを懸念したことがあるとみられる(「コメルサント」118日)。ロシア産業家起業家連盟(RSPP)のアレクサンドル・ショーヒン会長は、各企業は投資計画や予算、経営陣の任命などが必要な時期に来ており、これが滞れば企業活動自体が停止すると危機感を表している(「RBK117日)

(注1)連邦政府指示第430-r号(202235日付)別表に規定している(2022年3月9日記事参照)。

(注2)株式持ち分や議決権の半数以上を有する個人または法人、および企業の株式の25%以上を保持し当該企業の活動をコントロールできる個人。

(欧州ロシアCIS課)

(ロシア)

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