カナダ政府、米商務省によるカナダ産針葉樹材のAD・CVD第4次行政審査予備評価結果に不服を表明

(カナダ、米国)

米州課

2023年01月30日

カナダのメアリー・エング国際貿易・輸出促進・中小企業・経済開発相は1月24日、米国商務省が同日発表した、特定の針葉樹材製品に対する反ダンピング関税(AD)と相殺関税(CVD)に対する第4次行政審査の予備評価の結果を不服とする声明を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国商務省が1月27日に正式発表のADPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)およびCVDPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の第4次行政審査結果によると、AD・CVDを合計した税率はおおむね現行の8.59%から8.24%に引き下げられるものの、2社については引き上げることになっている。ウェスト・フレイザー(本社:ブリティッシュ・コロンビア州)に対しては、ADとCVD合計で現行の8.25%から9.38%に、キャンフォー(本社:ブリティッシュ・コロンビア州)に対しては5.87%から7.29%に引き上げられる(添付資料表参照)。

これに対し、エング国際貿易相は、米国が不当な関税の維持を決定したことは、双方の多くの国民にとって失望的(disappointing)だとし、「カナダは長い間、米国市場にとって不可欠な供給元であり、これらの不当な関税は引き続き米国の消費者に税金として作用し続け、インフレが急進する中で建築コストを増大化させ続けている」と述べたほか、「カナダの針葉樹に対する関税は、カナダ全土の森林部門の企業、労働者、コミュニティーに損害を与えており、WTOによって違法と判断されているものだ」と述べている。

米国商務省は2022年8月に、第3次行政審査の最終結果に基づき、大多数の企業に対する適用税率を現行の17.91%から8.59%に引き下げることを発表していた。これは2022年1月の第3次行政審査の予備評価による11.64%への引き下げ(2022年2月3日記事参照)よりも、さらに適用税率を低くする内容ではあったが、カナダ政府は、そもそもAD・CVDが課されていること自体が不当で、税率の引き下げでは不十分として、米国に適用停止を強く求め、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)に基づき、紛争解決手続きを申請していた(2022年8月30日記事参照)。

なお、今回の米商務省の発表結果は、第4回行政審査の暫定結果を反映したものであり、同日に発効するものではなく、最終結果は今回の正式発表後120日以内に発表予定となっている。また、第4次行政審査は2021年の価格ベースで行われているため、関税率はさらに調整される可能性がある。

エング国際貿易相性は、今後カナダの利益を守るためにCUSMAやWTOでの紛争解決制度を含め、利用可能なあらゆる手段を通じてカナダの利益を守るために、州、準州、産業界と引き続き緊密に協力していくとしており、今後の今具体的対応が注目される。

(高山さわ)

(カナダ、米国)

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