カナダ政府、米国によるカナダ産針葉樹材へのAD・相殺関税の撤廃求め、CUSMA紛争解決手続きを申請

(カナダ、米国)

米州課

2022年08月30日

カナダのメアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相は829日、米国がカナダ産針葉樹材に対し賦課しているアンチダンピング関税(AD)と相殺関税(CVD)につき、米国商務省が84日に発表した第3次行政審査の最終結果について、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)の第10章に基づき紛争解決プロセスを開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国商務省は84日に、第3次行政審査の最終結果に基づき、大多数の企業に対する適用税率を現行の17.91%から8.59%に引き下げることを発表していた。この発表は、20221月の第3次行政審査の予備評価による11.64%への引き下げ(202223日記事参照)よりも適用税率を低くする発表ではあったが、カナダのエング国際貿易相は同日付で声明を発表し、そもそも関税が課されていること自体が不当で、税率の引き下げでは不十分として、米国に適用停止を強く求め、CUSMAの紛争解決章に基づき、紛争解決プロセスを行う意向を表明していた(202288日記事参照)。

今回の声明においても、エング国際貿易相は「カナダは、米国がカナダ産の針葉樹材に不当かつ不公平な関税を課し続けていることに失望している。唯一の公正な結果は、米国がCUSMAの義務を履行し、カナダのすべての針葉樹材製品に対する不当な関税の適用を停止することだ」と強く述べている。

また、「米国は、高品質で持続可能で革新的な建材に対する国内のニーズを満たすために、競争力のあるカナダの木材製品に長い間依存してきた。カナダからの針葉樹製品に対するこれらの不当な関税は、カナダのコミュニティー、企業、労働者などに害を及ぼすだけでなく、米国の消費者に対する課税ともなり、供給逼迫と物価高騰の重圧がのしかかる中、手頃な価格での住宅の入手を困難にする」と、カナダだけでなく、米国へも悪影響があると指摘している。

カナダ政府の発表によると、今回の紛争解決手続きを進めることは、本問題により影響を受ける州、準州、および業界のリーダーらと協議して決定されたという。

本記事の執筆時点で、特に米国商務省や通商代表部による声明などは確認できていない。

(高山さわ)

(カナダ、米国)

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