新農業・畜産相、世界食糧供給に向けた農牧研究公社の機能強化を示唆

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年01月12日

ブラジルで1月2日、農業・畜産相に就任したカルロス・ファバロ氏が就任演説で持続可能な農業開発を約束し、土地劣化面積を作付面積に変えていくよう努めると述べた。ファバロ氏は、農牧畜業者などを支持基盤に持つ議員団体である農牧畜系議員前線(FPA)の創設メンバーの1人。2012~2014年にマットグロッソ州大豆トウモロコシ生産者協会(APROSOJA-MT)の会長、2016~2017年にマットグロッソ州政府環境局長、マットグロッソ州選出上院議員を歴任している。

ファバロ氏は、食事を十分にとれない人々が多数いる課題を踏まえ、飢餓と闘っていく考え方を強調した。ブラジル農業・畜産省の傘下で食品や繊維、エネルギー生産のために熱帯環境下の農業や畜産の研究・開発を進めるブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)による機能強化を主要な約束の1つとして挙げている。これは、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領が大統領選挙の決選投票直前に公開した「明日のブラジルへ向けた手紙」(2022年11月1日記事参照)でも触れられていた内容と一致している。ファバロ氏はブラジルが食糧生産において「比類のないプレーヤー」になるためにはEMBRAPAが重要な役割を担っていることを強調している。ブラジル農業の生産性向上や生産量増加には、EMBRAPAによる研究開発投資が欠かせないためだ。

また、同農業・畜産相は、環境に配慮することでブラジルが世界各国との距離感を縮めることが必要だとの考え方を示している。2022年12月29日付現地紙「カナル・ルラル」はジャーナリストのアレシャンドレ・ガルシア氏のコメントとして、農業生産者の立場を理解し、先進性とテクノロジーを熟知しているファバロ氏を農業・畜産相に選出したことはポジティブだと評している。またファバロ新農業・畜産相は、ジャイール・ボルソナーロ前大統領政権時のテレーザ・クリスチーナ元農業・畜産相(2019~2022年)や第1期ルーラ政権時(2003~2006年)のホベルト・ホドリゲス元農業・畜産相(2003~2006年)の考え方に近い、との見方を「カナル・ルラル」紙は報じている(注)。

(注)テレーザ・クリスチーナ元農業・畜産・供給相は、2022年3月18日にサンパウロ州工業連盟(FIESP)から功績をたたえられ、ビジネス環境の整備やロシア・ウクライナ間の情勢変化に起因する肥料調達への対応などに重要な役割を果たしたとされている。ホベルト・ホドリゲス元農業・畜産・供給相は、ブラジルにおいて日本式の農業協同組合制度を普及・発展させるなどの功績があり、日本政府から旭日重光章を受章している。

(古木勇生)

(ブラジル)

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