スウェーデン企業が欧州最大のレアアース鉱床発見

(スウェーデン)

ロンドン発

2023年01月20日

スウェーデンの鉄鋼企業LKABは1月12日、欧州最大規模のレアアース鉱床を同国北部キルナ近郊のパー・ガイヤー(Per Geijer)で発見したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

LKABは同地域で、電気自動車(EV)や風力タービンなどの製造に必要なレアアース酸化物を約100万トン発見。同社は既存のキルナ鉱山から新鉱床までのルートを既に確保し、詳細な調査を行う準備に着手しているとした。一方で、さまざまな調査や許可申請手続きなどに鑑み、実際の採掘をして市場に供給できるようになるには、少なくとも10~15年かかるとしている。

欧州では現在、レアアースの採掘が行われていないため、EVなど製品の電化により需要の急増が予想される中、レアアース不足が懸念されている。欧州委員会によると、レアアース需要は2030年には5倍以上に増加すると見込まれている。一方で、欧州はレアアースを中国からの輸入に依存しており、それが欧州産業の脆弱(ぜいじゃく)性を高めると考えられている。英国のBBC(1月13日付)によると、2021年にEUで使用されたレアアースの約98%が中国から輸入されたものだった。今回のレアアース鉱床の発見により、EUの鉱物・金属のロシアや中国への依存からの脱却が始まると、エバ・ブッシュ・エネルギー・企業・産業担当相は述べた。

また、キルナではスウェーデンがEU理事会(閣僚理事会)の議長国(2022年12月22日記事参照)となって初めてのEU理事会が1月12~13日に開催された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ウルフ・クリステション首相は、歴史的な規模でグリーン産業への移行が行われているスウェーデンやEUでほかに類を見ない地域を紹介するため、キルナでの会議開催を決定したと明らかにした。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は1月13日、クリステション首相との共同会見で、ウクライナ復興やエネルギー危機、Fit for 55(注)、クリーンテック産業を2023年前半の優先事項とすることを表明した。

(注)2030年の温室効果ガス削減目標として、1990年比で少なくとも55%削減を達成するための欧州委員会政策パッケージ(2021年7月15日記事参照

(島村英莉、篠崎美佐)

(スウェーデン)

ビジネス短信 0e767179567cd83c