バイデン米政権、ロシアの民間軍事企業ワグネルなどを制裁対象に指定

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2023年01月27日

米国のバイデン政権は1月26日、ロシアによるウクライナ侵攻に加担していることを理由に、ロシアの民間軍事企業ワグネルや同社と取引のある事業体、ロシア政府高官らを金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。

制裁は財務省と国務省がそれぞれの権限で発動した。財務省はワグネルや同社を世界各地で支援する事業体12社と、それらに関与する個人6人をSDNに指定したと公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ワグネルについては、2017年と2022年にもウクライナの政情不安への加担を理由にSDNに指定しているが、財務省は今回、ウクライナ侵攻への加担に加えて、アフリカ諸国でも政情不安の扇動や、人権侵害、天然資源の強奪を行っているとして「国際犯罪組織」に指定した(注1)。ジャネット・イエレン財務長官は、ロシア政府が各国からの制裁を受けて軍需品の調達をワグネルなどに依存している状況を指摘した上で、「ロシアの軍を支援するワグネルとその関係者、関連企業に対して拡大した本日の制裁措置は、プーチンが軍備を増強する力をさらにそぐもの」との声明を出している。

国務省も同日、ロシアのウクライナ侵攻に関して追加の制裁措置を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ワグネル関係では、同社とつながりのある事業体5社と個人1人をSDNに指定した。また、ロシアのデニス・マントゥロフ副首相兼産業商務相を含む政府関係者ら9人、ロシアの軍産複合体に関係のある事業体14社もSDNに指定している。このほか、ロシア軍関係者531人に対して、米国入国ビザ規制を課している。アントニー・ブリンケン国務長官は「米国はロシアが世界中で行っている威圧的行為や不安定化をもたらす行動に断固として対峙(たいじ)していく構えだ」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した。

SDNに指定した対象には、在米資産の凍結や米国人(注2)との資金・物品・サービスの取引禁止という制裁が科される。また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDNに今回指定した企業などの詳細は、財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる(注3)。ワグネルについては、商務省も2022年12月に同社への輸出管理を強化する措置を公表している(2022年12月23日記事参照)。米国政府が2022年2月以降に発動した対ロシア・ベラルーシ制裁関連については、添付資料を参照。

(注1)「国際犯罪組織」に関する制裁プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、国際犯罪組織が米国の安全保障、外交政策、経済にもたらす脅威に対処するために2011年に設置したもの。制裁効果はSDNと同様となる。

(注2)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注3)ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は、同省の「ウクライナ/ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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