アジア進出企業向けに人権尊重ガイドライン実装ウェビナーを開催

(シンガポール)

シンガポール発

2022年12月20日

ジェトロは12月12日、経済産業省と共催で在東南アジアや南西アジア日系企業向けに、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と、同ガイドラインを踏まえた実務について解説するウェビナーを開催した。同ウェビナーは日本政府が9月13日に同ガイドラインを公表したことを受けたもの。

同ガイドラインは、(1)人権方針の策定と公表、(2)人権デューディリジェンス(人権DD)(注)、(3)救済の3つの柱で構成。同ガイドラインでは、日本で事業を行う全ての企業に対して、(1)~(3)の実施を求めている。人権尊重の取り組みの対象は直接の取引先に限られず、間接の取引先なども含まれる。

同ガイドラインの検討会委員を務めた長島・大野・常松法律事務所の福原あゆみ弁護士は同ウェビナーで、人権リスクが複数存在する場合には、深刻度(規模、範囲、救済の困難度)や、リスク発生の可能性を踏まえて、優先順位を付けた上で対応する重要性を強調した。また、人権リスクへの対応として、リスクのある企業との取引停止は、ガイドラインでは「最後の手段」として検討されるべきだとしていると解説した。森・濱田松本法律事務所の眞鍋佳奈弁護士は同ウェビナーで、人権DDの実施にあたっては「自社が責任をもって行うのが不可欠」と述べた。しかし、自社で100%できない場合には、外部の専門家の助けを借りる必要性も指摘した。

ジェトロが2022年8~9月に実施した2022年度海外進出日系企業実態調査によると、ASEANに進出する日系企業(回答企業2,133社)の55.9%が、サプライチェーンにおける人権問題を経営課題と認識していると回答した。眞鍋弁護士によると、東南アジア進出の日系企業の間では、ミャンマーの2021年2月の政変や、ロシアによる2022年2月からのウクライナ軍事進攻を受けて、人権問題を自社の課題としてとらえる企業が増えているという。

サプライチェーンと人権に関連する各国の法令や企業の適用事例などについては、ジェトロの特集サイトを参照。

(注)企業が、自社・グループ会社およびサプライヤーなどにおける人権への負の影響を特定し、防止・軽減し、取り組みの実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する一連の行為。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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