シンガポールの住宅賃料が過去最高水準に高騰

(シンガポール)

シンガポール発

2022年12月02日

シンガポール都市再開発庁(URA)によると、総合民間住宅賃貸指数は2022年第3四半期に、前年同期比23.9%増と2桁の上昇になった。このうち、外国人駐在員が多く住む高層住宅(コンドミニアムなど)の賃貸指数も同23.9%上昇した。同国の住宅賃料は2021年以降上昇している。特に2022年に入ってから新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の流行が沈静化し、経済活動が再開する中で、過去最高の水準まで高騰している(添付資料図参照)。

シンガポールでは、同国に居住する世帯の約8割が公団住宅(HDBフラット)に居住する。一方、戸建て住宅には富裕層が主に住み、外国人駐在員の多くがコンドミニアムなど高層住宅を賃貸借している。URAの同統計によると、外国人駐在員が多く住む都心部〔都心中央部(CCR、注)〕の高層住宅の賃貸指数は2022年第3四半期に、前年同期比22.9%上昇した。また、都心部の賃料上昇を受けて、中央部以外の郊外の高層住宅賃貸指数も同24.9%上昇している。地場不動産情報サイトのプロパティ・グルによると、CCR内の住宅都心部ラッフルズ・プレイスにある高級コンドミニアム、「ザ・セール」の1ベッドルームの賃料は2022年11月30日現在、1カ月5,000~7,200シンガポール・ドル(約50万5,000~72万7,200円、Sドル、1Sドル=約101円)に上る。

民間住宅賃料の急上昇を受けて、複数の人が1つの居住スペースと、仕事のためのスペースを共有し、比較的に安価な「コ・リビング」の需要も増加している(2022年2月26日付地域・分析レポート参照)。地元ニュースメディアのチャネル・ニューズ・アジアが11月23日に伝えたところによると、コ・リビング・スペースの稼働率は95%以上へと上昇している。

国家開発省は11月7日、国会質問への書面回答で、最近の住宅需要増加の背景について「新型コロナの影響に伴って住宅建設が遅れ、一時的に住宅需要が高まっているのに加えて、新型コロナ流行の沈静化による経済活動の再開で住宅需要全体が増加している」と説明した。また、同省は「住宅賃料の上昇が、住宅の賃貸を必要とする国民や海外からの人材(誘致)に影響を与える可能性があり、市場の状況を詳細に注視している」と述べた。その上で同省は、海外人材が移住先を選択する際には、賃料だけでなく、海外とのコネクティビティーや貿易面のリンクの良さ、生活環境など複数の要素を考慮した上で判断していると指摘した。

(注)都心中央部(Core Central Region、CCR)は、繁華街オーチャードから高級住宅区ブキティマ地区のほか、マリーナベイ・サンズのあるダウンタウン地区、南部沖のセントーサ島を含む。詳細はURAのウェブサイト参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

(本田智津絵)

(シンガポール)

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