11月のインフレ率は前月比で2月以来の低水準に
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2022年12月21日
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は12月15日、2022年11月の消費者物価指数(CPI)上昇率を発表した。全国平均値で前月比4.9%上昇した。これは、2月以来最も低い上昇率で、民間調査会社などの予測値6%超を下回った。しかし、前年同月比(年率)では92.4%上昇となり、過去30年間で最高値を更新した(添付資料図参照)。1~11月の累計上昇率(前年12月比)は85.3%に達した。
INDECの発表によると、季節によって価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは、11月単月で前月比4.1%上昇したが、10月単月より4.9ポイント低下した。エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは6.2%で、同じく1.2ポイント低下した。季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は4.8%となり、前月より0.7ポイント低下した。
11月の上昇率を費目別にみると、前月比で最も大きく上昇したのは、住宅・光熱・その他燃料が8.7%上昇となり、主に電気、ガス、水道料金の値上げが影響した。電話やインターネットサービス料金の値上げもあり、通信は6.4%上昇した。他方、CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)は3.5%の上昇にとどまった(添付資料表1参照)。
民間エコノミストらの分析によると、11月のCPI上昇率の低下には主に3つの要因がある。まず、果物や野菜の価格には、毎年この時期に下落する季節要因があるという。次に、深刻な干ばつ(2022年9月28日記事参照)の影響により肉牛の飼養に必要な飼料が不足しているため、食肉処理数が増加している。それにより国内市場での牛肉の供給量が増加し、価格下落が進んでいるという。そして3つ目は、政府が11月11日に導入した価格凍結制度「プレシオス・フストス」(2022年11月28日記事参照)が効果を発揮しているという。同制度は、約1,500品目の価格を凍結しただけでなく、スーパーマーケットで販売されている全ての商品価格を4%までの引き上げにとどめるよう定めている。また、政府は、燃料価格も2023年3月まで毎月4%までの値上げのみを許可するとした(12月15日付現地紙「インフォバエ」など)。
なお、ジェトロが毎月15日をめどに行っている、ブエノスアイレス市内での独自の価格調査でも、燃料と食品を中心に4%前後の値上げにとどまっていることが確認できた(添付資料表2参照)。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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