米国政府、ジンバブエの大統領子息らを制裁対象に

(ジンバブエ、米国)

ヨハネスブルク発

2022年12月23日

米国政府は12月12日、ジンバブエに対するSDNリスト(注1)を更新し、同国の人権と民主主義を脅かす危険があるとして、ジンバブエ人4人と法人2社を新たにリストに追加した。4人の中には、エマーソン・ムナンガグワ大統領の子息で、同国有数のビジネスマンであるエマーソン・ムナンガグワ・ジュニア氏らが含まれる。法人2社は、大手コングロマリット企業であるサクンダホールディングス(Sakunda Holdings)と農機具サプライヤーであるフォッシルアグロ(Fossil Agro)だ。2社は、汚職の温床となっているといわれる政府の農業プログラムに関与しているとされる。なお、今回の見直しにより、すでに制裁対象の活動に関与してないとされた17人の名前が削除された。

米国やEUは、2001年に初めてジンバブエに対して制裁を科し、与党・ZANU-PF党員などの85人と、関与する企業を制裁対象とした。当時はロバート・ムガベ前大統領政権下で土地接収法が可決され、強制接収に反対する政敵や白人農家などが弾圧され、国内は混乱状態にあった。リストは今も定期的に更新されており、徐々に制裁対象は少なくなっているものの、ムガベ前大統領が辞任した今もこの制裁措置は継続している。なお、ムナンガグワ現大統領自身もSDNリストに名前が載っており、2022年12月13~15日に開催された「米国・アフリカリーダーズサミット」(2022年11月29日記事参照2022年12月19日記事参照)には、外相が代わりに出席した。

なお、南部アフリカ開発共同体(SADC)(注2)は10月、欧米諸国に対して、ジンバブエへの制裁を撤廃するよう要求していた。SADCによれば、制裁により国外の金融市場はジンバブエに悪い印象を持ち、それによりうまく外国直接投資を呼び込むことができていないという。さらには、世界銀行などからの1,000億ドル以上の融資を受ける機会を失った可能性があると推定している。しかし、米国財務省は声明で、この制裁は特定の個人や企業を対象にしたもので、「ジンバブエ一般市民や、ジンバブエという国、ジンバブエの銀行セクターを対象としていない」としている。

(注1)米国大統領が、国家の安全保障を脅かすものと指定した国や法人、自然人などをSDN(Specially Designated Nationals and blocked Persons)リストとして公表すること、および同リストに記載された制裁対象が米国内に保有する資産を凍結できることなどについて規定している。

(注2)南部アフリカ共和国を中心に16カ国からなる地域経済グループ。

(堀内千浪)

(ジンバブエ、米国)

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