欧州包装・プラスチック業界、包装材規制の規則化など歓迎も、不満も示す

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月02日

欧州委員会は11月30日、包装材と包装廃棄物に関する規則案を発表した(2022年12月2日記事参照)。それに先立ち、欧州の包装材バリューチェーンに関わる64の業界団体は11月10日に発表した共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、欧州委の同規則案の策定手法について、関連業界の提言の多くが取り入れられず、企業にとっては実装が困難な規制となり、欧州産業界全体にとってもサプライチェーンや通商上の混乱のリスクがあると、強い懸念を示していた。

規則案の発表後、共同声明に加わった包装材の業界団体ユーロペン(EUROPEN)は、規則案は「未完成」だと冷評し、欧州全域でリサイクル促進に向けた企業の設備投資を惹起(じゃっき)することができなければ、リサイクルや再利用が十分に行われないという認識が欠けているなど、持続可能性の観点では不十分な点が多いとした。また、詰め替えや再利用が可能な包装材については、衛生や食品の安全性などに関連して特定の評価基準が必要で、規則案は再利用可能な原材料の比率の目標値を設定するだけではなく、詰め替え・再利用への取り組みを拡大させつつ、廃棄物の回収やリサイクルの義務化を実現する、より明確な枠組みを示すべきだったとした。一方で、現行指令の見直しに当たり、EU加盟国に直接適用できる規則とすることについては、独自の規制を設ける加盟国によって単一市場が歪曲(わいきょく)され、循環型経済への移行の障害となっているとの認識から、歓迎するとした(EUROPENのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同じく声明に署名した欧州飲料協会(UNESDA)は、欧州委案は野心的で、包装材の回収やリサイクル、再利用の推進につながる点はあるものの、飲料業界にとっては「改善の必要がある」とした。特に、食品用プラスチック包装材のカスケード利用(注1)に関連して、食品衛生基準に適合する食品用包装材の使用が求められる業界に対して、新たな規制で求められるリサイクル原材料の含有率に合致するには、優先的に高品質の再生材料を調達できる仕組みが必要だと指摘した。UNESDAは、そうした仕組みを設けることで食品用に使用可能な品質の再生材料を実際に食品用包装材として再活用することがより可能となるとした。さらに、主に飲料容器について、再利用率の目標値が設定されたことに反発を示し、店内での消費やテークアウトなど、飲料にはさまざまな消費形態があることから、再利用やリサイクルの促進に向けて、中小企業を中心に、設備投資による過剰な負担がかかることへの懸念も示した(UNESDAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

プラスチック業界はケミカル・リサイクルの普及への取り組み必要と指摘

同様に声明に名を連ねたプラスチック産業団体プラスチックス・ヨーロッパは、欧州委案は「幾つか前向きな要素があり、プラスチック包装業界を変容させる起爆剤となる可能性がある」と評価した。その上で、プラスチック資源の循環を拡大させるには、EUの政策や規制により官民の投資を増大させる必要があり、特に食品用プラスチック包装材などのリサイクル原材料の含有率を高めるには、ケミカル・リサイクル(注2)への投資の拡大が求められるとして、再生材料のトレーサビリティーを可能とするEUレベルでのルール策定が早急に必要だとした。

また、新たなビジネスモデルや、分別やリサイクル技術の開発には、科学的な根拠に基づき、全ての原材料や技術に同様に適用されるガイドラインやルールが必要だとした。そのほか、欧州委案ではバイオベースのプラスチック(2022年12月2日記事参照)の利用促進の取り組みが不十分との懸念も示した(プラスチックス・ヨーロッパのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注1)利用したことで品質が下がったものなどを別の用途に用いるなど、高レベルの利用から低レベルの利用へと、多段階(カスケード)に活用すること。

(注2)廃プラスチックを化学的に分解し、化学製品の原料として再利用すること。

(滝澤祥子)

(EU)

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