欧州委、バイオベースなど代替プラスチックに関する政策枠組み発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月02日

欧州委員会は11月30日、循環型経済政策パッケージの一部として、バイオベースのプラスチック、生分解性プラスチック、堆肥化可能プラスチックに関する政策枠組み外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを取りまとめ発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これらのいわゆる代替プラスチックは現在、世界やEUのプラスチック生産の約1%にとどまるが、世界での生産規模は2022年に前年比でほぼ倍増が見込まれるなど、急成長している。その半面、欧州委によると、消費者にも産業界にも情報の混乱が生じており、代替プラスチックが環境負荷を軽減する手段となる前提条件や基準を提示し、こうした代替素材が循環型経済に寄与する指針を示すことが政策枠組みの目的だ。

エコデザイン規則やタクソノミー基準への反映を想定

バイオベースのプラスチックについては、前提として、有機性廃棄物や製造過程で生じる副産物由来の原料の使用を優先し、砂糖原料や穀物、植物油など食用作物由来の原料の使用を最小化することを生産者に求めている。消費者による誤認を避けるために、バイオベースのプラスチック原料の含有率を明記することを求め、それが可能でない場合は「バイオプラスチック」などの表記を避けるよう企業に求めた。現状ではEU共通の認証制度やバイオベース原料の含有率に関する確立した最低基準がないことから、欧州標準化委員会の専門委員会(CEN/TC411)が示した指針の適用を推奨するとした。

生分解性プラスチックに関しては、材料の特性だけでなく、それが使用される環境やリスク面まで考慮したシステムとして捉えなければならないとの原則を示した。現状では、生分解性プラスチックは多くの場合、飲食料品用など使い捨て目的で使用されるが、単に従来型のプラスチックを置き換えるだけではプラスチックリサイクルの健全な発展を阻害するリスクがあり、2019年に発効した特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令(2021年6月7日記事参照)の対象製品を含む使い捨て用途品では、生分解性プラスチックであることをうたったり、その表示をしたりすることは不適切とした。生分解性プラスチック使用の好例として、農業用マルチフィルムを挙げている。

堆肥化可能プラスチックは、生分解性プラスチックに対する政策枠組みと共通するものの、家庭での完全な堆肥化は容易ではないため、原則として産業用途のみ、かつ従来型プラスチックの混入がなく堆肥化の質が確保できることなど限られた条件下でのみ、そのように表示し運用することが推奨されるとした。具体例として、青果物に直接添付するシールや、紅茶のティーバッグ、コーヒーカプセルなどを挙げ、同じく30日に発表した包装材・包装廃棄物に関する規則案(2022年12月2日記事参照)で詳細を規定した。

この政策枠組み文書そのものに拘束力はないが、欧州委は、エコデザイン規則案(2022年4月4日記事参照)が成立した際の製品別の基準策定や、循環型経済に関するタクソノミー基準(注)の指針となることなどを想定している。

(注)ジェトロ調査レポート「EUサステナブル・ファイナンス最新動向‐タクソノミー規則を中心に」を参照。

(安田啓)

(EU)

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