ジェトロの「日本・モンゴル・ビジネスセミナー」、両国の商習慣の違いなど解説

(モンゴル、日本)

中国北アジア課

2022年12月09日

ジェトロは11月30日、「日本・モンゴル・ビジネスセミナー」を開催した。セミナーでは人工知能(AI)やIT、イノベーション分野のビジネス事例に関する講演(2022年12月9日記事参照)に続いて、ジェトロ・ウランバートル・エージェントの藤井一範氏がモンゴルの経済概況や商習慣について、モンゴル国商工会議所(MNCCI)のトゥメンジャルガル・ドゥーレン最高経営責任者(CEO)がモンゴル産品の輸出拡大について講演した。

藤井氏は、モンゴルの経済成長率が2020年に前年比マイナス4.6%、2021年に1.6%、2022年1~9月には前年同期比3.7%になったと紹介した。また、昨今のインフレと通貨トゥグルグ安の進展、外貨準備の減少も指摘した。その上で、最近のモンゴル経済は「好不調の変動が大きい」「資源価格などの外的要因の影響を受けやすい」とまとめた。藤井氏は具体例として、石炭価格の上昇がモンゴルの輸出にとって追い風となっている点を挙げ、その一方で、ガソリンやディーゼルなど燃料価格の上昇は国内経済に悪い影響を及ぼしていると説明した。

日本とモンゴルの商習慣の違いについては、日本の方が契約や約束を重く受け止める傾向がある一方、モンゴルでは情勢変化が発生して契約で負った義務を履行できなくなった場合に「状況が変わったのだから仕方がない」との考えに至るケースもあると述べた。これは、モンゴルの経済状況の変動の大きさや、外的要因による影響を受けやすいことが背景にあり、そのようなリスクを事前に考慮しておくことが重要と指摘し、対策としてリスクに関する想定の範囲を広くすることなどを挙げた。一例として、日本では停電は数年に1度あるかないかだが、モンゴルでは平均的に月1回以上は起こり得ており、そのような想定での行動が必要になると解説した。

写真 ジェトロ・ウランバートル・エージェントの藤井氏の講演(ジェトロ撮影)

ジェトロ・ウランバートル・エージェントの藤井氏の講演(ジェトロ撮影)

モンゴル国商工会議所のドゥーレン氏は、鉱業、特にその中でも鉱業に携わる大企業に利益が集中している構造を転換する必要性に言及。今後の方向性について「鉱業に偏っている産業構造を打開するため、観光業に注力しようとしていたところ、新型コロナウイルス感染拡大によりこの計画は進まなかった。今後は輸出を強化していく。モンゴルの特産品であるカシミヤ、革製品、パインナッツなどは、これまで無加工のまま原材料として輸出することが多かったが、加工産業の活性化を目指しており、最終製品での輸出も今後増やしていきたい」と述べた。

写真 モンゴル国商工会議所(MNCCI)CEOのドゥーレン氏の講演(ジェトロ撮影)

モンゴル国商工会議所(MNCCI)CEOのドゥーレン氏の講演(ジェトロ撮影)

(亀山達也)

(モンゴル、日本)

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