EUとWHO、インフルエンザ・RSウイルス・新型コロナの同時流行を警戒する共同声明発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月05日

欧州委員会、世界保健機関(WHO)およびEUの専門機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)の3機関は12月1日、欧州において気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症を引き起こす代表的なウイルスであるRSウイルスの流行と、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)再流行の懸念が認められる中で、季節性インフルエンザが早くも流行拡大期に入ったとする共同声明を発表した(ECDCプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

ECDCによれば、インフルエンザの流行拡大は11月中旬に確認され、これは過去3シーズンと比較して拡大期入りは早い。欧州内では地域によって傾向は異なるものの、インフルエンザA型、B型いずれも流行が確認されているが、ECDCは多くのEU加盟国からA(H3)型の流行が報告されていると指摘した。10月以降、入院患者が増加し、約半数が55歳以上となっている。

RSウイルスによる入院患者は同ウイルスのB型が85%を占め、4歳以下の乳幼児の入院が最も多い。声明では欧州の約20の対象国・地域でRSウイルスの流行が激しさを増していると警戒した。

新型コロナについてはこれまでのところ、過去12カ月に比べ感染者数や入院者数など各数値は低い水準にあるものの、依然として医療体制に負荷を及ぼしており、新たな変異株の出現で状況が悪化し得ることを考慮すべきとした。

声明では、現状ではこの冬の今後の展開は予想が難しいとしつつ、季節性インフルエンザおよび新型コロナの双方についてワクチン接種を強く呼びかけた。また、RSウイルスの感染状況については、EUレベルでの報告対象となっていないことから、加盟国に対しECDCおよびWHOへの情報提供の強化を求めた。

EU、グローバル保健戦略でWHOを中心とした多国間協力を支持

欧州委は11月30日、新型コロナ感染拡大によって、パンデミックの発生など世界規模の保健課題に多国間で協力を深めつつ、EUとしてのリーダーシップを発揮するための新たなグローバル保健戦略を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この中で欧州委は、こうした課題には多国間での協力体制の強化が不可欠であり、その中心にあるWHOも権限や財政面での強化が必要だとした。他方、新型コロナワクチンの普及では、とりわけ初期段階において、保健課題が地政学的な要素も内包することが顕在化したことなどを背景に、同戦略をEUが目指す戦略的自律の重要な要素とも位置付けた。

具体的には、EUの域外へのインフラ支援戦略であるグローバル・ゲートウェイ(2021年12月3日記事参照)プロジェクトの一環として、アフリカや中南米でのワクチン生産拠点の設立支援を挙げた。また、保健分野でのデジタル化を後押しするとして、新型コロナワクチンの接種証明書などに関するEU共通の枠組み「EUデジタルCOVID証明書」で培ったデジタル技術の応用も戦略に含めた。

(安田啓)

(EU)

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