チリで合成燃料の製造工場が稼働開始、ドイツのポルシェやシーメンスが参画

(ドイツ、チリ)

ミュンヘン発

2022年12月28日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)傘下のポルシェは12月20日、同社がシーメンスエナジーなどとともに、チリ最南部のマガジャネス州プンタ・アレーナスで手掛ける合成燃料生産プロジェクトにより建設した工場が稼働開始したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同工場は、風力発電設備から水素製造のための電解槽、合成燃料製造設備までを1カ所に統合した世界初の合成燃料商用製造プラントだ(2022年4月15日記事参照)。プロジェクトに参画しているシーメンスエナジーによると、同プロジェクトの水電解装置はシーメンスエナジー、風力発電の風力原動機はシーメンスガメサが提供した。

稼働を祝う式典に参加したポルシェのバーバラ・フレンケル役員(調達担当)は「ポルシェは車両の電動化と同時に、補完的技術として合成燃料にも取り組む」とし、ポルシェが同プロジェクトを通じ、合成燃料開発の分野で主導的な役割を担うとした。

なお、VWグループのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は12月16日に開催されたVWグループの臨時株主総会で、「VWは電気駆動に取り組む。電気自動車(EV)が持続可能な交通の最適解だ」としつつも、既存の内燃機関搭載車や船舶・航空輸送などを考慮すると、「合成燃料が一定の役割を担う可能性もある」とし、「VWグループではポルシェを通じて合成燃料の開発を続ける」とコメントしている。

同プロジェクトでの合成燃料の生産目標は、これまでに発表された目標から大きな変更はない。具体的には、2023年に約13万リットル、2025年までに約5,500万リットル、その約2年後には約5億5,000万リットルの生産を予定する。ポルシェは同プロジェクトで製造した合成燃料を当面、モータースポーツや試乗施設などのパイロットプロジェクトで利用する。同社はこれまでに合成燃料に1億ドルを超える投資を行っている。

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は2022年10月、乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案について暫定合意に達した(2022年10月31日記事参照)。これを受け、EUでは2035年までに「全ての新車をゼロエミッション化」、すなわち、同年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止することが確定した。ただし、合成燃料など炭素中立な燃料のみを使用する車両の2035年以降の販売については、欧州委が新たな提案を行うことになっている。

(高塚一)

(ドイツ、チリ)

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