米議会が2023年度国防授権法案を可決、ウクライナや台湾支援予算を含む

(米国、ウクライナ、台湾、中国、ロシア)

ニューヨーク発

2022年12月19日

米国連邦議会上院は12月15日、2023年度の国防授権法案(NDAA)を83対11の賛成多数で可決した。下院では12月8日に350対80の賛成多数で可決しており、ジョー・バイデン大統領の署名をもって近く成立する見込みだ。

NDAAは、国防関連予算の分配や政策方針を定める重要法案となる。本来は歳出法案と合わせ、会計年度が開始する10月1日以前に成立させるべきものだが、与野党の交渉が間に合わず、年度開始後に成立するのが通例となっている。ただし、慣例的に年末までの成立が必須となっており、今回もそれは順守された。なお、歳出法案については、12月23日までの合意が目指されている(2022年12月16日記事参照)。

2023年度NDAAが設定した国防予算の総額は8,579億ドルで、バイデン政権の要求額より約450億ドル多くなっており、前年度と比べても約1割増となった。上院軍事委員会が公表しているNDAAの概要PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2023年度は中国やロシアとの戦略的競争、極超音速兵器・人工知能(AI)・第5世代移動通信システム(5G)・量子コンピューティングなどの破壊的技術、船舶・航空機・車両の現代化、軍人とその家族の生活向上を含む、米国にとって最も重要な国家安全保障の優先事項に焦点を当てているという。国際安全保障の側面では、ウクライナおよびNATOへの支援に、政権の要求額より5億ドル多い8億ドルが設定された。共和党議員が財政緊縮の立場から「ウクライナに白地小切手を与え続けるべきではない」との問題意識を提示しており、それに応えるべく、適正な予算運用を監視する枠組みが盛り込まれた。

中国に関連して、インド太平洋地域については、ボブ・メネンデス上院外交委員長(民主、ニュージャージー州)が別途2022年9月に同委員会で可決し、本会議に提出していた「台湾強靭(きょうじん)性促進法案(TERA)」がNDAAの一部として成立した(2022年9月16日記事参照)。これには、台湾が中国の威圧的行為に対抗するための安全保障能力の現代化に対し、5年間で最大100億ドルの支援を行うことなどが含まれている。このほか中国関連では、連邦政府機関およびその契約業者が中国半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)、長鑫存儲技術(CXMT)、長江メモリ(YMTC)の製品・サービスを使用することを禁じる条項が含まれた。ただし、同条項の施行は法案成立から5年後とし、各機関の長に適用除外の権限を与えるなど、当初案から緩和された。米国商工会議所をはじめとする産業界がサプライチェーンの混乱を危惧し、議会に懸念を表していた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますことが影響したとみられる(ロイター12月6日)。

(磯部真一)

(米国、ウクライナ、台湾、中国、ロシア)

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