米州政府でTikTok使用禁止相次ぐ、メリーランドなど

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年12月12日

米国メリーランド州のラリー・ホーガン知事(共和党)は12月6日、中国とロシアの特定企業の製品とプラットフォームを州政府機関で使用することを禁じる緊急命令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。動画共有アプリTikTokのほか、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)とZTE、中国テック大手のテンセントとアリババ、ロシアのウイルス対策ソフト大手カスペルスキーの製品が対象となる。

各機関は州のネットワークからこれらの製品を削除し、製品の導入を防止する措置を実施する必要がある。また、対象サービスの使用とアクセスも禁止する。ホーガン知事は緊急命令の理由について、これらの企業がもたらすサイバーセキュリティー上のリスクを指摘し、対象製品が中国とロシアによるスパイ行為や政府機関の監視、機密情報の不適切な収集に使われる恐れがあると説明した。

中でもTikTokについては、個人情報の取り扱いなどを懸念する州政府の間で排除する動きが強まっている。テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は12月7日、州政府機関に対し、州政府が支給する機器でTikTokの使用を禁止するよう命じた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。また、州政府職員の個人端末でTikTokを使う場合の脆弱(ぜいじゃく)性に対処する計画の策定も公安局などに指示した。

サウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事(共和党)も11月29日、州政府職員や州政府の請負業者が州政府の機器でTikTokを使うことを禁じる知事令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

サウスカロライナ州では、ヘンリー・マクマスター知事(共和党)が12月5日、州政府機関が使うインターネット機器などの管理を担う行政局に対し、同局が管理する全ての電子機器でTikTokへのアクセスを禁止するよう要請した。

ウィスコンシン州でも、ロン・ジョンソン上院議員やマイク・ギャラガー下院議員ら同州選出の共和党の連邦議員6人がトニー・エバーズ知事(民主党)に対し、州政府の機器でTikTokの使用を禁じるよう求める書簡を送付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするなど、今後もTikTokの使用を制限する州政府が増える可能性がある。

連邦議会はTikTokを巡る国家安全保障上のリスクへの懸念を強め、バイデン政権に対応を促している(2022年7月7日記事参照)。ジョー・バイデン大統領は2021年6月にTikTokを含む中国製アプリの米国内での利用を禁止するトランプ前政権の措置を撤回する一方、外国の敵対者から米国民の機微情報を保護する対策の検討を商務長官などに指示する大統領令に署名した(2021年6月15日記事参照)。また、財務省が議長を務める対米外国投資委員会(CFIUS)が主導し、TikTokと国家安全保障に関わるリスクの軽減措置を交渉中とされる。両者は今夏に一度暫定合意に達したが、アプリで使われているアルゴリズムの共有方法などに関わる懸念が払拭(ふっしょく)されず、交渉は停滞しているもようだ(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版12月6日)。

TikTokは中国政府への利用者データの共有を否定しており、9月に上院公聴会に出席した同社の最高執行責任者も「これまで米国の利用者のデータを中国政府に提供したことはないし、もし求められたとしても提供することはない」と証言している。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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