習国家主席、平等と相互尊重の上でEUとの人権対話に前向きな姿勢

(中国、EU)

北京発

2022年12月05日

中国の習近平国家主席は12月1日(中国時間)、北京市で欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長と会談を行った。両者は4月1日にオンライン会談を行っている(2022年4月12日記事参照)。

習国家主席は、11月30日に死去が発表された江沢民元国家主席について「中国・EUの指導者会談メカニズム構築を推進し、双方の各分野での対話・協力を促進した」と評し、その遺志を継ぎ、引き続きEUとの関係を発展させるとした。

習国家主席は関係発展に向けて、(1)正しい認識を堅持する、(2)食い違いを適切に管理する、(3)さらに高いレベルの協力を行う、(4)国際協調・協力を強化する、という4点が必要だとした。

(1)については、「中国と欧州には根本的な戦略的対立や衝突はない」として、EU加盟国が中国に対する客観的で正確な認識を持ち、平和共存、相互利益を堅持し、冷戦思考とイデオロギーや制度の対立を乗り越え、「新冷戦」に反対することを希望するとした。

(2)については、双方には文化やイデオロギーなどの違いがあり、いくつかの問題で見解が異なることは当然だとし、建設的態度で対話・協議を維持し、相互の重要な懸念と核心的利益を尊重すべきだとした。その上で、平等かつ相互に尊重しあうという前提の上であれば、EUとの人権対話を行ってもよいとした。

(3)については、マクロ経済政策協調や、市場・資本・優位性を持つ技術などでの相互補完を強化し、デジタル経済、グリーン・環境保護、新エネルギー、人工知能など新たな成長のエンジンを作り出すとともに、サプライチェーン・産業チェーンの安全・安定・信頼性を確保すべきだとした。また、デカップリングやサプライチェーンの分断、保護主義、経済・貿易や科学技術交流の政治問題化・武器化に共同で反対する必要があるとした。

(4)については、気候変動、生物多様性保全、エネルギー・食料安全保障、公衆衛生などについてグローバルな対応を牽引し、双方の優れた公共財や協力プラットフォームの連携を強化するべきだとした。

中国国際問題研究院欧州研究所の崔洪建所長は、ミシェル常任議長の今回の中国訪問は「地政学や経済状況など複雑な背景がある中で、EUの大多数の国は中国と接触したいという、(EUで)主流となっている見解と理性的な声を体現したものだ」と評価した(「環球時報」12月2日)。

(河野円洋)

(中国、EU)

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