米ニューヨーク市、第3四半期オフィス賃貸が大幅回復も新型コロナ前には届かず
(米国)
ニューヨーク発
2022年10月12日
米国の不動産会社コリアーズ・インターナショナルが10月10日に公表したレポートによると、ニューヨーク(NY)市マンハッタンのオフィス賃貸総面積は2022年第3四半期(7~9月)に前期比26%増の923万平方フィート(約281万平方メートル)と、新型コロナウイルス感染拡大以降で最も大きくなった。感染状況が落ち着くにつれ、オフィス需要が徐々に回復しているとみられる。
同レポートによると、金融サービス、保険、不動産セクターが賃貸総面積の47%を占める。次いで、テクノロジー、広告メディア、情報サービスが21%、会計など専門サービスが18%となっている。平均募集賃料は前期比2%減の1平方フィート当たり74ドル7セントで、2020年第4四半期(10~12月)以来の平均募集賃料の下落となった。空室率は前期比0.8ポイント減の16.4%、過去8年で最も大きい下落幅で、2021年3月の水準まで回復した。
一方で、新型コロナ禍前の水準には届いていない。2019年の賃貸面積は約1,300万平方フィート、空室率は10.0%だった。
今後の見通しについても不透明さが残る。インフレ抑制のための急激な金融引き締めによる金利上昇や、それに伴うドル高といったコスト高は、建設など新規投資の今後の抑制要因になっていく上に、米国経済は景気後退局面を迎えつつあり、労働需要自体も今後減退していく可能性がある。10月4日公表の雇用動態調査によると、8月の求人件数は約1,005万件と前月から約112万件減少、パンデミックが本格化した2020年4月以来の減少幅を記録した。景気に敏感な職種では新規採用抑制の動きが目立っている。アマゾンでは小売部門の今年いっぱいの新規採用を凍結予定としているほか(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版10月4日)、SNS大手のメタも今後の新規採用を凍結すると従業員に発表している(ブルームバーグ9月29日)。小売り大手ウォルマートでは管理部門の人員削減に8月に着手したとされている。
景気後退によって消費など需要自体が減退していく可能性もある中、NY市のオフィス需要がこのまま回復していくか、全米最大都市なだけに今後の推移が注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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