カナダの2021年国勢調査、労働力の高学歴化や技能職不足などが顕著に

(カナダ)

トロント発

2022年12月05日

カナダ統計局は11月30日、2021年国勢調査の最新データを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、カナダの労働力市場はG7諸国の中で最も高い教育水準を維持しているものの、建設や機械など、実習を必要とする生産・技能職の労働人口が大幅に減少していることや、移民は教育水準の向上に貢献しているが、学歴の過剰取得に直面する割合が高いことなどが明らかになった。

統計局によると、2021年国勢調査では労働年齢人口(25~64歳)の57.5%に当たる1,125万人が大学や専門学校、単科大学などの資格を取得し、前回調査の2016年に比べて10.0%増加した。OECDの2022年調査では、同比率は日本55.5%、米国50.3%、英国50.1%、フランス40.7%、ドイツ31.1%、イタリア20.0%で、カナダは2006年以降G7諸国で首位になっている。

これとは対照的に、実習を必要とする生産・技能職資格保持者は、労働年齢人口の9.6%に当たる189万人で、2016年に比べて7.6%減少した。中でも建設業(大工、電気工事、配管工など、0.6%増)、機械・修理工(自動車整備士など、7.8%減)、精密機器製造業(溶接工など、10.0%減)の3分野では、団塊世代の退職に比べて若年労働者の参入が追い付かず、資格保持者数は停滞もしくは減少した。実際、建設業や金属加工製品製造業などに関連する業種の求人数は2022年に過去最高を記録した。統計局では、向こう10年は同様の傾向が続くと予想しており、技能職に依存する産業にとって深刻な課題となっている。また、こうした3分野の移民の割合は10.0%と、生産年齢人口に占める割合の27.7%と比べても低いことも示された。

さらに、2016年に比べて増加した学士号以上の学位保有者のうち、2016~2021年に移民となった層が占める割合は、博士号で55.8%、修士号で52.2%、学士号で39.1%となり、移民が教育水準の向上に貢献していることが明らかになった。カナダでは経済移民を多く受け入れており(2022年11月4日記事参照)、学歴は受け入れの重要な要件となっている。ただし、国外で学位を取得した移民のうち25.8%が高卒程度の能力を必要とする職種に就いており、移民の学歴が十分に生かされていないケースも浮き彫りになった。この問題は、統計局が2006年国勢調査で学歴の取得国情報を追加して以降散見され、カナダ国外の学位を持つ移民数の増加とともにさらに顕著になっているという。統計局はこの状況について、「カナダ国外で教育を受けた労働者の学歴が十分に活用されず、貴重な人材が放置されている可能性がある。人口の多くが定年退職を迎える中、この人材活用は重要だ」と指摘している。

(飯田洋子)

(カナダ)

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