2023年から資源採掘関連で課税強化

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年12月01日

ロシアで2023年1月1日から、エネルギー資源採掘関連の課税強化が実施される。2022年11月21日にプーチン大統領が連邦法第443-FZ号(2022年11月21日付)に署名、同法が成立したことによるもの。本改正により、液化天然ガス(LNG)の生産企業に対し現行税率を大きく上回る企業利潤税が適用されるほか、天然ガス、石炭、原油の採掘税が増税となる。

日本の法人税に相当する企業利潤税は20%で、LNG生産企業に対しても原則、同じ税率が適用されていた。これが、2023年から2025年までの3年間、34%に引き上げられる。ロシア国内で現在LNGを生産する企業は、「サハリン2」プロジェクト(2022年8月5日記事参照)などに関わる国有ガス大手ガスプロムと「ヤマルLNG」を主導する独立系天然ガス開発会社ノワテクの2社(コメルサント10月12日)。このうち、ノワテクは特例措置として企業利潤税の軽減税率が適用されており(インターファクス通信9月23日)、大きな引き上げとなる。

資源採掘税の増税は、原油・天然ガス採掘税率の決定に使われる係数の変更により税率を引き上げる。例えば、石炭の税率は種類により1トン当たり1~47ルーブル(約2.3~108円、1ルーブル=約2.3円)だが、一律1トン当たり380ルーブルに引き上げられる。採掘税の増税により政府は、2023年から2025年までの間、8,400億ルーブル~9,600億ルーブルの税収増を見込む(注)(ロシア新聞10月18日)。

ロシアでは2022年の石油ガス収入が税収の約4割を占める。本措置は確実に税収確保が見込める分野に網をかけたとの見方が強い一方、政府の思惑どおりに機能するかは専門家から疑問の声も上がる。「欧米の禁輸措置で1日当たり数十万バレルの石油輸出減もありうる。その影響は予想よりも大きい」(国民エネルギー研究所のアレクサンドル・フロロフ副所長、ベドモスチ11月23日)、「資源採掘産業は制裁下で設備近代化を図らなければならない。歳入の資源分野依存からの脱却が叫ばれてきたが、いまだ実現していない」(石油ガス生産者連盟専門家分析センターのイリーナ・ケジク氏、イズベスチヤ11月23日)などの見方がある。

(注)「ロシア新聞」(10月18日)によると、税収の内訳は、天然ガス採掘が2023年6,300億ルーブル、2024年7,000億ルーブル、2025年7,500億ルーブル。原油採掘は2023年以降、毎年約2,100億ルーブルで推移する見込み。

(欧州ロシアCIS課)

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