2022年のM&A市場は減速も、地場企業が牽引
(ベトナム)
ハノイ発
2022年12月05日
ベトナム・インベストメント・レビュー(VIR)主催による「ベトナムM&Aフォーラム2022」が11月23日、ホーチミン市内で開催された。14回目となるイベントは、今回、「Igniting new opportunities(新たなチャンスに火をつける)」をテーマに行われた。
基調講演として、KPMGベトナムのウォリック・クレイン最高経営責任者(CEO)がベトナムM&A市場の動向を発表した。
ポイントは以下のとおり。
2022年1~10月のベトナムでのM&Aは345件、56億9,700万ドル(開示ベース、以下同)だった。年計との比較にはなるが、2020年の576件、74億7,200万ドル、2021年の694件、108億2,100万ドルと比べて、減退する見込み。2022年は世界的な地政学リスクやインフレを懸念し、買い手企業の判断が慎重になる傾向が見られた。
2022年1~10月の「メガディール」(1億ドル超の案件)は13件で、不動産、一般消費財などの分野に集まった(添付資料表1参照)。
同期間の買収国・地域別の投資金額は、ベトナム(地場)13億ドル、シンガポール12億100万ドル、米国5億2,400万ドルだった(添付資料表2参照)。過去のM&Aは日本、韓国、台湾、米国、シンガポール、タイなどの国外投資家が中心だったが、直近3年のM&Aは件数・金額ともにベトナム地場企業が牽引。
2023年は、世界経済の不透明感に伴うベトナム経済減速の可能性や、インフレ率と金利の上昇、通貨安などにより、投資家の判断が慎重になることが予想される。しかし、取引をちゅうちょさせる2大要因のインフレ率と金利が低下すれば、2023年後半から市場は再び活発化することが見込まれる。
今後、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーン電力への移行、巨大な消費者市場、ESG(注)意識の高まりなどがベトナムM&A市場の重要テーマとなる。
パネルディスカッションでは、地場ドラゴンキャピタルグループのドミニク・スクライブン最高経営責任者(CEO)が「M&A市場で投資家や取引が多様化していることは、ベトナムにとってプラス」と述べた。また、東京証券取引所シンガポール支店の吉松和彦支店長は、有望なASEAN企業との協業やM&A通じた日本企業の国際化、イノベーション促進の重要性を指摘。ジェトロとの協業(2022年11月7日記者発表参照)などを通じ、これらの支援を強化する意向を示した。
ベトナムM&Aフォーラム(ジェトロ撮影)
(注)ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもの。これら3つの取り組みに配慮して事業活動を推進しているかどうかは、企業価値を測る1つの指標として使われている。
(新居洋平)
(ベトナム)
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