英政府、原子力や水素技術への新たな投資を発表

(英国)

ロンドン発

2022年12月16日

英国政府は12月13日、原子力および水素技術の研究開発に対して総額1億200万ポンド(約170億3,400万円、1ポンド=約167円)の投資を行うことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の資金提供は、「グリーン産業革命のための10項目の計画(2020年11月20日記事参照)」に基づいて設立した総額10億ポンドの投資ファンド「ネットゼロ・イノベーション・ポートフォリオ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を通じて実施する。

原子力分野では、英国での次世代革新炉研究と核燃料生産の支援に7,700万ポンドを投じる。うち次世代革新炉研究については、2030年代初頭までに稼働する可能性のある高温ガス炉(HTGR)の研究を進めるため、最大6,000万ポンド相当を資金提供する。

さらに、核燃料については、英国での改良型ガス冷却炉向けの燃料生産において重要な生産施設であるスプリングフィールズ(注)に最大1,300万ポンドを投資する。これにより、英国での核燃料製造能力を発展させ、核燃料の輸入依存度を低下させるとしている。加えて、施設の位置するイングランド北西部ランカシャー地域の雇用の保護にも寄与するとしている。

水素については、炭素回収・貯留型バイオマス発電(BECCS)を通じた水素製造技術の開発のため、2,500万ポンドを投資する。今回の資金により、プロジェクトの設計から実証の段階まで支援する。政府は製造した水素を、運輸や重工業など脱炭素化が困難なセクターにクリーンな燃料として提供するとしている。

併せて、ガスボイラー利用に関する提案も発表された。家庭用のガスボイラーの性能基準を引き上げるとともに、2026年から販売されるすべての家庭用ガスボイラーを水素対応とするとしている。本提案については、2023年3月まで意見公募が実施される。2021年10月に発表された「熱・建物戦略」では、2035年以降、ガスボイラー新規設置の段階的廃止を目指しており、新たな暖房システムは、ヒートポンプや水素対応ボイラーなどの低炭素型にする必要があるとしていた(2021年10月25日記事参照)。

(注)米国ウェスチングハウスの英子会社ウェスチングハウスエレクトリックUKが管理する核燃料生産施設。

(菅野真)

(英国)

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