物流課題解決へ、地場スタートアップと日本企業が協業

(ベトナム)

ハノイ発

2022年12月07日

ベトナムの物流課題の解決に向けて、地場スタートアップと日本企業が協業する動きがみられる。

コールドチェーン構築を目指し、デンソーのベトナム法人は1127日、電動バイク製造や充電バッテリーのサブスクリプション事業(注)を展開するベトナム地場スタートアップのセレックスモーターズ(以下、セレックス)と実証事業実施に関する覚書を締結した。

今回の実証では、デンソーがヤマト運輸と開発した小型モバイル冷凍機をセレックス製の配送事業者向け電動バイクに提供し、6カ月間、低温輸送に関する需要の確認やデータ収集を行う。

セレックスは、2018年にハノイで設立されたスタートアップ。ベトナムの電子商取引(EC)サイト大手のラザダなどに、電動バイクとバッテリーのサブスクリプションサービスを提供している。今回搭載される小型モバイル冷凍機は、電動バイクのバッテリーを電源として活用できる点が強みとなる。

なお、デンソーとセレックスは、ベトナム国家イノベーションセンター(NIC)、ベトナム日本商工会議所(JCCI)、ジェトロによる日越企業間の連携促進の枠組み(2022年5月6記事参照)に基づくセミナーを通じてマッチングをし、今回の実証に至った。

デジタル化による業務効率化を目指した協業もみられる。化学系商社の長瀬産業は107日、長距離トラック運転手と荷主とのマッチングを行う地場スタートアップのロジバンとの業務提携を発表した。

ベトナムでは、荷主企業と長距離トラックなど配送業者との間に仲介者が何層にも介在する効率の悪さが課題となっている。特に長瀬産業は樹脂製品など多品種を扱い、ベトナムにおける取引先も多いため、物流の効率化が急務となっていた。ロジバンとの協業により、配送ルートや積載量の最適化、コスト削減を図る。本協業には、温室効果ガス排出量算定・可視化サービスを展開する日本発スタートアップのゼロボードも参画し、環境課題や物流の付加価値向上にも取り組む。

写真 NIC、ジェトロ立ち会いの下、覚書に署名するデンソーベトナム(左)とセレックス(右)の代表者(ジェトロ撮影)

NIC、ジェトロ立ち会いの下、覚書に署名するデンソーベトナム(左)とセレックス(右)の代表者(ジェトロ撮影)

写真 2022年10月、ハノイ市郊外に完成したセレックスの電動バイク組み立て工場(ジェトロ撮影)

2022年10月、ハノイ市郊外に完成したセレックスの電動バイク組み立て工場(ジェトロ撮影)

(注)バッテリーを定額で貸し出し、市街地などのバッテリーステーションでバッテリー交換ができるように整備するビジネスモデル。利用者が自ら充電し、待機する時間が不要になるのがメリット。

(山梨彰彦)

(ベトナム)

ビジネス短信 016176b098f1747c