米税関・国境警備局、テロ防止CTPATの強制労働に関わる要件ガイダンス公表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年11月04日

米国税関・国境警備局(CBP)は11月1日、「テロ防止のための税関・産業界パートナーシップ(CTPAT)」の貿易法令順守プログラムに関するハンドブックの改訂版を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。主な改訂として、8月に同プログラムの参加要件に追加した、強制労働への対処に関わる事項について説明している。

CTPATは、2001年の同時多発テロを受けて導入した官民共同のプログラムで、米国向け貨物のサプライチェーンのセキュリティー強化と貿易円滑化の両立を目的とする。CTPATの認定を受けた事業者は、CBPによる審査回数の削減や検査時の優先権などの便益が受けられる。CTPATは「セキュリティー」と「貿易法令順守」の2つのプログラムで構成されており、貿易法令順守プログラムについては2022年8月1日以降、同プログラムの前身の制度に参加していた事業者以外も認定申請が可能となった(2022年8月12日記事参照)。

貿易法令順守プログラムに申請する事業者は特定の要件を満たす必要がある。8月1日に強制労働に関わる要件が追加され、申請事業者はサプライチェーンにおける強制労働の防止を含む包括的な内部統制システムを実施し、それを説明する文書の提出が必須となった(注1)。

ハンドブックでは、具体的に次の6つの事項を挙げている。

  • 輸入者が強制労働のリスクが最も大きいと考える地域やサプライヤーなどを含むサプライチェーンについての説明資料を準備し、CBPの要請に応じて提出する。
  • サプライチェーンにおける強制労働に反対する立場を表明する行動規範の声明を策定し、提出する。この行動規範の声明は、CTPATセキュリティープログラムの認定要件で推奨事項となっている社会的法令順守体制に含める(注2)。
  • 社会的法令順守体制の実施を示す証拠を提出する。これには、強制労働のリスクが高いサプライチェーンの監査情報や、強制労働の兆候の特定に関する従業員向けの社内研修プログラムなどが含まれる。
  • 自社の社会的法令順守体制についてサプライヤーに研修を行い、CBPの要請に応じて研修の証明を提出する。
  • サプライチェーンで強制労働が発覚した場合の是正計画を保持し、CBPの要請に応じて情報を提供する。
  • 強制労働のリスク低減のために、必要に応じて、ベストプラクティスをCBPと共有する。

貿易法令順守プログラムの認定事業者は、セキュリティープログラムに参加している場合の便益に加えて、CBPの事前教示制度での裁定迅速化などの便宜を享受できる。米国で2022年6月に施行されたウイグル強制労働防止法(UFLPA、2022年8月5日付地域・分析レポート参照)に基づいて差し止められた貨物についても、CBPは貿易法令順守プログラム事業者からの輸入例外申請を優先的に処理する方針だ。

一方、CBPはUFLPAの執行体制を強化しており、税関の電子申請システム(ACE)改修の一環として、中国の新疆ウイグル自治区からの輸入に注意喚起するシステムを導入する計画だ。具体的には、中国の原産品を輸入する場合に、中国内の生産地の郵便番号の入力を求めるとしている。当初は2022年11~12月に導入予定としていたが、CBPは11月1日のガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで新しい導入日が決まるまで延期すると発表している。

(注1)ハンドブックでは、内部統制システムの構築と管理・評価に関して、付属書DとEでそれぞれガイダンスを提供している。

(注2)CTPATセキュリティープログラムにおける輸入者向けの要件はCBPウェブページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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