米国のテロ防止のCTPAT、強制労働に関わる認定要件を厳格化へ

(米国)

ニューヨーク発

2022年08月12日

米国で導入されている「テロ防止のための税関・産業界パートナーシップ(CTPAT外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」について、「貿易法令順守(Trade Compliance)」プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますへの新規申請の受け付けが81日に開始された。対象要件を満たす事業者はオンラインのCTPATポータルから申請できる。

CTPAT2001年の同時多発テロを受けて導入された官民共同のプログラムで、米国向け貨物のサプライチェーンのセキュリティー強化と貿易円滑化の両立を図ることを目的とする(注1)。CTPATの認定を受けた輸入業者は、米国税関・国境警備局(CBP)による審査回数の削減や検査時の優先権などの便宜が受けられる。CTPATの認定を受けるには、サプライチェーンのセキュリティー保護に関わる要件を満たす必要がある。

CTPATは「セキュリティー」と「貿易法令順守」の2つのプログラムで構成している。貿易法令順守プログラムは、CTPATとは別に運用していた「輸入者自己評価(Importer Self-AssessmentISA)」プログラムが発展し、CTPATに統合されたもので、2020年に開始された。ISAに参加していた事業者は貿易法令順守プログラムに既に移行したが、202281日以降、そのほかの事業者も認定申請が可能となった。同プログラムに参加することで、セキュリティープログラムに参加している場合の便益に加えて、CBPの事前教示制度での裁定迅速化などの便益を享受できる。

貿易法令順守プログラムへの申請対象要件を満たす事業者は、セキュリティープログラムに参加している米国またはカナダの輸入業者となる(注2)。対象事業者は申請時にCBPとの基本合意書(MOU)や調査票を提出する必要がある。調査票には強制労働に関わる内部統制手続きを尋ねる設問があり、事業者は自社の社会的法令順守体制に強制労働への対処が含まれているか情報開示を求められる。

強制労働への対処は、セキュリティープログラムの認定要件外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにもある。この認定要件はこれまで推奨(Should)にとどまっていたが、貿易法令順守プログラムの申請事業者については81日以降、必須(Must)になったもようだ。米サンドラー・トラビス&ローゼンバーグ法律事務所によると、申請事業者は、強制労働の使用に反対を表明する行動規範の声明を策定し、提出する必要があるとしている。強制労働への対処を含む法令順守の実施を示す証拠の提出も求められる。そのほか、CBPに求められた際には、強制労働のリスクが最も高いサプライチェーンに関してその地域や関連サプライヤーをマッピングした資料や、強制労働が発覚した場合の是正計画、自社の法令順守体制に関するサプライヤーへの研修の実施を示す証拠を提供しなければならない。既存の貿易法令順守プログラム認定事業者はこれらの要件について、202381日までに順守する必要がある。

(注1CTPATの概要は、2021年11月8日記事参照

(注2)対象事業者や参加要件などは、CBPの「CTPAT貿易法令順守ハンドブック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を参照。

(甲斐野裕之)

(米国)

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