行政長官の施政報告、企業・人材誘致体制の強化や住宅問題解決に向けた施策表明

(香港)

香港発

2022年11月01日

香港特別行政区政府の李家超(ジョン・リー)行政長官は10月19日、7月1日の就任後初となる施政報告(施政方針演説)を行った。

報告では「『一国二制度』の堅持」「ガバナンスのさらなる向上」「成長への原動力の創出」「民生問題への取り組み」「調和と安定の維持」「若者の育成・発展支援」「感染症への対策」について演説を行った(添付資料表参照)。

「『一国二制度』の堅持」では、同は香港が長期的に安定した発展を遂げる上で最良の制度と強調。制度の原則を堅持し、中国憲法と香港基本法に定められた香港政府の憲法上の基礎と秩序を順守すると述べた。

「ガバナンスのさらなる向上」では、意思決定のメカニズムや、制度目標、リーダーの役割、権限職責の分担、実行メカニズムなどの観点から、ガバナンスの改善を行うとした。

「成長への原動力の創出」では、香港域外から企業や高度人材を呼び込む働きかけや受け入れ体制を整備すると表明。300億香港ドル(約5,640億円、1香港ドル=約18.8円)規模の「共同投資基金」の創設による誘致企業への投資や、誘致先に対する土地・税務面などでの特別支援措置の提供などを盛り込んだ。また、オフショア人民元のビジネスセンターとしての機能強化や、イノベーションとテクノロジー(I&T)の国際センターとして、I&Tの高度人材の誘致や学生へのインターンシップの機会創出などについても言及した。このほか、林鄭月娥(キャリー・ラム)前行政長官が2021年10月の施政報告の中で打ち出した中国広東省深セン市と接する元朗区と北区を中心とする「北部都会区」の建設に関しては(2021年10月11日記事参照)、計画遂行に向け「全力を挙げる」と表明した。

「民生問題への取り組み」では、住宅問題を解決することが最優先事項と強調。5年以内に3万戸の簡易公営住宅を建設し、供給量を増やすことで公営住宅入居までの待機時間の短縮を図るとしたほか、民間住宅に関しても、供給安定のために十分な土地を開発して提供すると述べた。また、ランタオ島海域の交椅洲人工島の埋め立て計画や「北部都会区」の鉄道建設事業を含む鉄道・幹線道路戦略計画を前進させると述べた。

「調和と安定の維持」では、2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた取り組みとして、建物のエネルギー効率向上などを通じたエネルギー消費の削減や、電気や水素エネルギーを活用した公共交通機関や自動車の普及に向けた計画の推進、2035年までのゼロ廃棄物埋め立て達成などを挙げた。

「若者の育成・発展支援」では、若者の住居購入需要に応えるべく、土地供給増に向けたプロジェクトの実施や安価な宿泊施設の供給増などを掲げた。また、香港の大学卒業生を対象とした広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)での就業支援スキームを推進し、起業支援、インキュベーションサービスの提供も継続すると述べた。

「感染症への対策」では、中国本土との往来正常化に向けて中国政府と協議を進めるとした。その中ではまず、本土への入境前に香港で隔離措置を済ませる「逆隔離(出発前隔離)」の実現に向けた協議に取り組むと表明。同措置では、本土への感染リスクを増大させることなく、本土側の隔離施設などのキャパシティー圧迫を回避することもできると説明した。このほか、深セン市への移動上限枠引き上げについても協議を行うと述べた。

施政報告の詳細は香港政府のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにて確認できる。

(松浦広子)

(香港)

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