行政長官の施政方針演説、新たな都市エリアの開発や住宅供給政策を表明

(香港)

香港発

2021年10月11日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は10月6日、2017年7月の就任以来5回目かつ任期中最後となる施政報告(施政方針演説)を行った。

同施政報告では、「一国二制度の着実な実施」「新たなパラダイム」「経済の新たな推進『国家発展の大局への融合』」「住宅と土地の供給増」「住みやすい街の建設」「民生の継続的な改善」「人材育成」および「感染症からの脱却」について演説した。

まず、「一国二制度の着実な実施」では、中国全国人民代表大会常務委員会での可決により、2020年6月末に施行された香港国家安全維持法と2021年に実施された選挙制度改革によって香港社会が安定し、一国二制度の正しい軌道に戻ったと強調。その上で、さらなる改善の観点から、香港基本法23条で求められている国家安全条例の制定を、香港政府として進める必要があると述べた。

「新たなパラダイム」では、中国広東省深セン市と接する元朗区と北区を中心にしたエリアに、300平方キロ規模の北部都市エリアを構築すると表明。元朗区と深セン市の前海地区を結ぶ香港深セン西鉄道の建設などの交通網を整備することや、住宅用・IT産業などの事業用に土地を開発し、最終的に250万人の居住、65万人の雇用を創出すると述べた。さらに、ガバナンス強化のため、文化スポーツ・観光局の新設、運輸・住宅局の運輸局と住宅局への分割などを提案した。

「経済の新たな推進『国家発展の大局への融合』」では、香港の発展は中国本土の発展と密接に関連しており、香港を支援する中国本土の施策を活用することが香港経済に継続的な推進力を与えると述べた。具体的には、国際金融センターの地位強化の観点から、香港証券取引所における特別目的買収会社を通じた上場枠組み整備の支援、ストックコネクトを通じた中国本土投資家による人民元建ての売買の検討などを提示。パンデミックの影響を大きく受けたコンベンションおよび展示会業界への補助金も2022年末まで延長する旨などを述べた。

「住宅と土地の供給増」では、今後10年間で33万戸の公営住宅を供給。民間住宅については、今後10年間で170ヘクタールの土地を供給して10万戸の建設を促す旨を述べた。

「住みやすい街の建設」では、2050年までのカーボンニュートラル目標の達成に向けた行動計画を速やかに公表すると表明。また、2035年までに、石炭を利用した通常発電を取りやめ、二酸化炭素排出量を2005年比50%の削減達成を目指すとした。

「民生の継続的な改善」では、高齢者への現金給付基準の改善などの貧困対策を行うと述べた。

「人材育成」では、高度な能力を有する香港外の人材に香港居住権を与えるスキームの対象人数を、前年の2,000人から4,000人に倍増させる旨などを発表した。

「感染症からの脱却」では、全てに優先する課題は新型コロナウイルス感染の抑制だとした上で、強制隔離のない通常の域外渡航の早期再開に向け、中国本土との間で議論を継続していると述べた。

施政報告の詳細は香港政府のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにて確認できる。

(野原哲也)

(香港)

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