米ニューヨーク市、11月1日から給与開示法の施行が始まる

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月02日

米国ニューヨーク(NY)市で11月1日から、給与開示法が施行した。法案成立時は5月15日からの施行が予定されていたが、同法への企業からの反対の声が大きく、準備期間を設ける配慮から、施行が約半年延期されていた(2022年5月9日記事参照)。

同法による開示義務の対象となるのは、4人以上の労働者または1人以上の家事労働者を雇用する雇用主。労働者にはオーナーや個人事業主自身も含まれ、かつ、従業員のうち1人でもNY市内で働いている場合についても、開示を求められる。ただし、人材派遣会社は例外で、この場合は派遣会社を利用する企業に開示の義務がある。

開示を義務付けられた企業は、求人情報に昇進時や転勤時も含めて給与の上限額と下限額(保険などの福利厚生や時間外手当、退職金などは除く)を記載する必要がある。給与の記載方法は、年俸のほか、時給などによる表示も認められる。開示の求められる媒体としてはチラシやインターネット、新聞などに掲載される広告のほか、社内掲示板のポスト募集の掲示なども含まれる。これらに違反した企業には最大25万ドルの罰金が科されるが、初回の違反の場合のみ、当局からの同法違反通知後30日以内に当該情報を企業が修正開示すれば罰金を免れる。市の人権委員会は一般からの同法違反の苦情を受け付けるとともに、執行機関もこうした情報や検査に基づいて違反がないか独自で調査を行うとしている。また、雇用者がその雇用主に同法違反を訴える際は、市の人権委員会に申し立てる以外にも、直接、民事裁判所に訴訟を提起することも可能だ。

新法施行を受けて、NY市内の企業は給与の開示を進めている。例えば大手小売りのアマゾンは、NY市でのソフトウエアエンジニア職について、週40時間勤務で15万8,100ドルから21万3,800ドルの年棒での求職表示を行っている。新法の対象には中小企業や個人事業主も含まれることから、こうした層の対応がスムーズに進むかが、今後の焦点となりそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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