米ニューヨーク市、給与開示法施行を11月1日に半年延期

(米国)

ニューヨーク発

2022年05月09日

米国ニューヨーク市議会で4月28日、5月15日施行が予定されていた給与開示法について、施行を半年遅らせ11月1日とする改正法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが成立した。企業から同法に反対する声が大きく、半年間の施行延期によって一定の配慮を見せたかたちだ。

給与開示法は、求人募集の際の求人情報リストに、昇進時や転勤時も含めて仕事についての給与の上限額と下限額の記載(保険など福利厚生や時間外手当、退職金などは除く)を企業に義務付ける。対象は4人以上の労働者、または1人以上の家事労働者を雇用する雇用主で、4人以上の労働者にはオーナーや個人事業主自身も含まれ、かつ、従業員のうち1人でもニューヨーク市内で働いていれば対象となる。違反した企業には最高25万ドルの罰金と従業員に対する金銭的損害賠償が科される可能性がある。

法案作成の背景には、人種間や男女間の賃金格差がある。2018年に行われた調査では、ニューヨーク市の男性労働者の給与中央値は女性よりも2万1,600ドル高く、白人労働者の給与中央値は黒人より2万7,800ドル高く、ラテン系より2万2,200ドル高いという結果が出ている。給与情報の開示により、不当な賃金格差是正を企図している。

同法案は2022年1月に成立し、5月15日からの施行が予定されていたが、成立後も企業から反対の声が相次いでいた。そこで、法案内容は変えないものの、施行延期によって同一労働同一賃金推進派と中小企業経営者との間でバランスを取ったかたちだ。法案は今後エリック・アダムス市長に送られ、同市長の署名を経て有効となる。

同一労働同一賃金については、連邦政府も男女間の格差を中心に取り組んでいるほか(2022年3月16日記事参照)、コロラド州では同様の法律が2021年に施行、ワシントン州でも同様の法案が可決されている(アクシオス5月2日)。以前に行われた実証研究で、同僚の賃金を知らされたグループでは、知らされていないグループよりも生産性が約10%高かったという調査結果もあり、米国内における今後の賃金開示の動向が注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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