カナダ環境・気候変動省、災害対応戦略を発表、16億カナダ・ドル拠出へ
(カナダ)
トロント発
2022年11月30日
カナダ環境・気候変動省は11月24日、「カナダ国家適応戦略:災害に強いコミュニティーと強い経済の構築」を発表した。カナダ政府は災害対応の改善や災害軽減と適応のための基金増強などを目的として、16億カナダ・ドル(約1,648億円、Cドル、1Cドル=約103円)を拠出する。自治体による洪水に耐える道路や橋などの公共インフラ整備や、山火事の際の安全情報アクセスの整備など、戦略で掲げた5つの優先分野での各事業に充当する。スティーブン・ギルボ環境・気候変動相の代理で会見に出席したビル・ブレアー枢密院議長兼非常事態対策相が明らかにした。
連邦政府は2021年から同戦略の策定を進めていた。カナダでは、9月に西部で山火事が拡大し(2022年9月14日記事参照)、東部でハリケーン「フィオナ」によって甚大な被害がもたらされる(2022年10月6日記事参照)など、気候関連の災害の被害が続いていることから、戦略の発表が待たれていた。
ブレアー大臣は「過去1年 に山火事や洪水、ハリケーンの被害が多発したことは、深刻さを増す気候関連災害に対して緊急な対策が必要なことを実証している」として、「国家適応戦略は、緊急事態に備えるというわれわれの仕事の新たな節目を象徴するものだ」と説明した。
ただ、カナダ自治体連合とカナダ保険協会が2020年2月共同で行った調査によると、カナダで気候変動の影響に対処するために官民が必要とする資金は年間53億Cドルと推定されている。 当地の報道によると、記者会見で連邦政府関係者は、戦略とともに発表された拠出金は「頭金」であり、戦略の目標を達成するにはさらに多くの資金が必要なことを認めたという(CBCニュース11月24日)。
発表を受けて、同日、前出のカナダ保険協会のクレイグ・スチュワート気候変動・連邦問題担当副会長は「カナダ初の国家適応戦略は、勇敢で野心的なものだ。適応目標をこれほど包括的に提案した国はほかにない」と新戦略を称賛した上で、「今こそ行動を起こすべき時であり、この国家適応戦略が行動の機会を与えてくれることを誇りに思う」とコメントした。同協会によると、悪天候による保険金請求は過去15年間で4倍以上に拡大しており、請求の大部分は水害によるもので、災害の損害額は1年当たり20億Cドルが「新常識」となっている。
(飯田洋子)
(カナダ)
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