カナダ政府、インド太平洋地域戦略を発表、今後10年間の包括的ロードマップ示す

(カナダ、日本)

米州課

2022年11月29日

カナダ政府は1127日、カナダのインド太平洋地域戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。ニュースリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、この地域戦略は、カナダが今後 10 年間でインド太平洋地域への関与を深めていく上での包括的なロードマップを示すもので、最初の5年間で約23億カナダ・ドル(約2,369億円、Cドル、1Cドル=約103円)近くの拠出を予定している。

地域戦略は、相互に関連する以下の5つの柱で構成されている。

1)平和、強靭(きょうじん)性、安全保障の促進(72,000Cドル超)

2)貿易、投資、サプライチェーンの強靭性の拡大(24,060Cドル)

3)人的投資と人とのつながり形成(26,170Cドル)

4)持続可能でグリーンな未来の構築(91,330Cドル)

5)インド太平洋へのパートナー国としての積極的な関与(14,330Cドル)

拠出額の3分の1近くを占める(1)平和、強靭性、安全保障の促進については、最近頻発する北朝鮮による弾道ミサイルの発射による周辺国地域での緊張の高まりを受け、同盟国の支援のため、インド太平洋におけるカナダ海軍のプレゼンス強化や軍事演習へのカナダ軍の参加機会の拡大、また、パートナー国・地域のサイバーセキュリティー能力の開発支援などを計画している。

4)持続可能でグリーンな未来の構築では、高品質かつ持続可能なインフラの支援のため、政府機関のカナダ輸出開発公社傘下の開発融資機関フィンデブ・カナダ(FinDev Canada)の事業をインド太平洋地域の優先市場で加速する取り組み(75,000Cドル)や、違法、無報告、無規制(IUU)漁業に対する対策強化を含む海洋環境の強化支援(8,430Cドル)などを含んでいる。なお、持続可能で環境に優しい未来の構築の拠出額は全体の4割弱を占め、(1)平和、強靭性、安全保障の促進の拠出額を上回っており、環境やグリーン分野へ積極的に取り組もうとするカナダ政府の意向がうかがえる。

2)貿易、投資、サプライチェーンの強靭性の拡大については、開かれたルールに基づく貿易の促進とカナダの経済的繁栄の支援を行う。具体的には、カナダとのビジネス、投資、ネットワークの拡大のためのカナダ貿易ゲートウェイの東南アジアでの設立(2,410Cドル)、インド太平洋地域での農業や農業食品輸出の多様化を目指す同地域初の農業事務所の設立(3,180Cドル)、インド太平洋地域のパートナーとの天然資源関連の協力関係の拡大のための貿易、投資、科学、テクノロジー、イノベーション分野への1,350Cドルの拠出を予定している。

メアリー・エング国際貿易・輸出促進・中小企業・経済開発相は、カナダ国民のほぼ 5 人に1人がインド太平洋地域にルーツを持っていると言及し、「インド太平洋はカナダの将来の繁栄にとって重要な地域で、カナダにとっての秘密兵器は『国民』だ」と述べている。また、東南アジアでカナダ貿易ゲートウェイを立ち上げることで、良好な雇用を創出し、経済を成長させ、太平洋の両側で包括的な機会を推進していくとしている。

地域戦略の太平洋北部の章では、日本との関係強化にも触れており、安全保障やエネルギー安全保障面、気候変動と環境保護面での協力深化や、2023年にG7議長国を務める日本への支援、2025年大阪・関西万博へのカナダ参加などについて述べている(2022年11月29日記事参照)。

なお、インド太平洋地域との関係強化に関しては、ジャスティン・トルドー首相が1116日、G20サミットでカナダがインド太平洋地域へ積極的に関与するパートナーとなるための各種支援策を発表するとともに、気候変動など各国が共有している対処すべき優先事項への取り組みを推進したと発表していた(2022年11月18日記事参照)。

(高山さわ)

(カナダ、日本)

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