中国日本商会、北京市の市外との往来制限に関する調査結果を公表、市に要望書提出

(中国)

北京発

2022年11月15日

在北京日系企業などの団体の中国日本商会は11月11日、「北京市外との往来規制にかかる実態調査」の結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。調査は10月26~31日に実施し、会員企業570社(注1)のうち97社から回答を得た。

北京市では8月ごろから、新型コロナウイルス感染者が出た区域を訪問すると「北京健康コード」(注2)にポップアップ(中国語では「弾窓」)が表示されることなどにより、北京市外との往来に支障をきたす事例が発生し(注3)、市内の日系企業の事業活動に影響を与えていた。

調査結果によると、回答企業の87.6%が、8月以降ポップアップが出る、または隔離を命じられる、北京市への訪問が認められないといった問題が発生した従業員が存在するとし、そのうち70.7%は原因が明確でなかったと回答した。また、日本から中国への渡航で、最初に他都市に入境してから北京市に入る場合、最初の入境地での隔離期間中にポップアップが表示され、隔離終了後も北京市内に入れなかった事例が17.5%の企業に存在するとした(注4)。こうした往来規制について、回答企業の95.9%が事業活動に悪影響があると回答している(注5)。

ポップアップ運用に関する合理化・明確化などを北京市に要望

こうした調査結果を踏まえて、中国日本商会は11日、北京市外事弁公室に対して「北京市外との移動規制に係る要望書」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提出した。要望書では、北京健康コードのポップアップの運用に係る予見性の確保と、ポップアップの解除に当たっての合理性の確保を強く要望した。また、ポップアップの解除申請について、外国人が利用しやすいよう改善を要望した(注6)。このほか、北京市外での集中隔離後の北京市内への確実な移動確保、北京市内の入境後の集中隔離施設の環境改善(注7)、3日間の在宅健康観察の確実な実施、PCR検査のためのパスポート情報登録の簡略化(注8)などを求めている。

なお、国務院共同防疫メカニズムは11月11日、「新型コロナ感染拡大の予防抑制措置をより一層合理化し、科学的で精密な防疫を徹底する通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。通知には、入境者の管理を「7日間の集中隔離+3日間の自宅健康観察」から「5日間の集中隔離+3日間の自宅隔離」に緩和することや、入境者が最初の入境地で隔離を終えた後の目的地で再度隔離を行ってはならないといった内容が盛り込まれており、同通知の内容が北京市でも徹底されるか注目される。

(注1)市内法人会員474、市外法人会員78のほか、賛助・個人会員18を含む。

(注2)PCR検査結果などの情報が反映されるもので、中国公民用の「北京健康宝」と外国人用の「Health Kit」の2種類のアプリ(またはアプリ内のミニプログラム)が存在する。北京市内で各種の施設に入る際や市内外との往来には、原則として健康コードをスキャン・提示することが求められており、健康コードにポップアップが表示されている場合、建物などへの入館や各種交通手段の利用ができなくなる(11月11日時点)。

(注3)他方、今回の調査結果では、リスク地区への訪問歴がなく同地区の所在する省や都市に行っただけでポップアップが発生したり、リスク地区が存在しない区で所定の日数を過ごした後でもポップアップが消えたりしない事例がみられたほか、同一の行程や行動でもポップアップが表示されるケースとされないケースがあり、表示の基準や運用が不透明といった声が上がっている。

(注4)中国への入境者に対しては、これまで原則として「7日間の集中隔離+3日間の自宅健康観察」が求められていた(2022年6月29日記事7月7日記事参照)。ただし、北京市では、居住・滞在先のマンション・アパート・ホテルが所在する社区(コミュニティー)が認めないといった理由で、実際には10日間の集中隔離が求められる場合が多かった(11月10日までの時点)。

(注5)具体的には、北京市から国内他都市への出張ができないことで拡販活動にマイナスの影響がある、北京市外に所在するパートナーや顧客先との関係構築・深化が困難になっている、重要案件の商談の進捗に影響が出ている、新規案件の検討が前に進まない、重要会議に参加できず意思決定の遅れが発生している、といった声があった。

(注6)ポップアップが表示された場合、社区への連絡や「北京12345」などの窓口を通じて解除を申請することができるとされているが、社区への報告を行うミニプログラムが外国人対応となっていないことや、「北京12345」が中国語のみでしか利用できないなど、外国人にとってハードルが高いとの声があった。

(注7)国外から北京市に直接入境した場合の北京市での入境後集中隔離施設の状況については、北京日本倶楽部作成の「北京渡航マニュアル」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに紹介されている(11月11日時点)。

(注8)現行のPCR検査では、外国人は多くの場合、検査を受ける際にその都度パスポートを提示し、氏名やパスポート番号を係員に手入力してもらう必要があるが、この方法では登録に時間を要するほか、登録された情報に誤りが生じやすく、検査結果がHealth Kitに正常に反映されないリスクがある。

(小宮昇平)

(中国)

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