細胞培養肉開発スタートアップが集積へ、アニマルフリーで環境貢献

(シンガポール)

シンガポール発

2022年11月07日

シンガポール食品庁(SFA)が2019年に世界に先駆けて新規食品(ノベルフード)の製造や販売などに関する規制ガイドラインを導入して以来、同国では細胞培養肉を開発する同国内外のスタートアップの集積が進んでいる。米国の非営利団体グッド・フード・インステチュート(GFI)の調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(20224月発表)によると、シンガポールを本社とする細胞培養肉開発企業は2021年に9社と、米国(26社)、イスラエル(14社)、英国(12社)に次いで4番目に多かった。このほか、シンガポールには米イート・ジャスト(Eat Just)をはじめ、海外から培養肉開発に取り組むスタートアップの進出も相次いでいる。

ウマミ・ミーツ(Umami Meats)は現在、フエダイ(レッドスナッパー)やウナギ、メバチと、絶滅が懸念される魚の培養肉の開発に取り組むシンガポールのスタートアップだ。同社は1027日、投資家や日系企業を含む提携先を招いて、培養フエダイのフライ肉やフィッシュボールなどの試食会を初めて開催した。ミヒール・プルシャド最高経営責任者(CEO)はジェトロのインタビューに対し、培養肉の開発を通じて「2050年までに海産物の少なくとも半分を保護するまでになりたい」と抱負を語った。

写真 ウマミ・ミーツが10月27日に試食会で披露したフエダイの培養肉を使ったフライ肉の断面。見た目と食感は本物の魚とほぼ変わらない(ジェトロ撮影)

ウマミ・ミーツが10月27日に試食会で披露したフエダイの培養肉を使ったフライ肉の断面。見た目と食感は本物の魚とほぼ変わらない(ジェトロ撮影)

また、米イート・ジャストは6月10日、シンガポールにアジアで最大の細胞培養肉の製造施設兼研究・開発(R&D)施設を着工した。同施設は2023年第1四半期(1~3月)に開設する予定だ。同社は2020年12月、培養鶏肉のチキンナゲットを世界で初めて商業販売している(2022年2月18日地域・分析レポート参照)。このほか、エビやカニなど甲殻類の培養肉を開発するシンガポールのシオック・ミーツ(Shiok Meats)も、2023年からの商業販売を目指している(2022年2月18日地域・分析レポート参照)。さらに、魚の培養肉を開発する中国のアバント・ミーツ(Avant Meats)は2021年4月、R&D拠点とパイロット製造施設の設置を発表しており、2022年中にも稼働開始する。

米パーフェクト・デー、精密発酵のアイスクリームを国内スーパーで販売開始

一方、米パーフェクト・デー(Perfect Day)は2022年9月から、乳製品を使わずに精密発酵技術で製造したアイスクリームをフェアプライスなど国内大手スーパーで販売を開始した。精密発酵とは、動物に依存することなく、微生物を使って特定のタンパク質を量産する技術。同社のスニル・クマール・スクマラン最高技術責任者(CTO)は10月28日、ジェトロのインタビューに対し、同社の製造技術では通常の牛乳を用いた場合と比較して「99%の水の使用を削減し、温室効果ガスを95%削減できる」と指摘した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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