米国、学生ローン減免措置で約1,600万人が債務帳消しに、米議会予算局試算

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月28日

米国議会予算局(CBO)は9月26日、バイデン政権が8月に発表した1人最大1万ドルの学生ローン債務減免措置(2022年8月25日記事参照)によって、約1,600万人の債務全額が免除となるとの試算結果を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

CBOによると、6月末時点の学生ローン利用者は4,300万人だが、約3,500万人が返済減免措置を受ける条件を満たし、そのうち約1,600万人は債務の全額が免除になると試算している。これにより、現在の債務残高は約1兆6,000億ドルあるが、約4,300億ドルが免除される見込みとなっている。

米国では大学の学費が高騰しており、USニューズ・アンド・ワールド・レポートによると、米国トップ20大学のうち19校は授業料など年間コストが約5万5,000ドルを超えているという。また、ブルッキングス研究所の最新の推計では、米国では高校までの子育てで約31万ドルを要するとされていることもあり、米国人の5人に1人が学生ローンを利用しているとされる(「ワシントン・ポスト」紙電子版5月22日)。一方で、シンクタンクのサードウェイが大学に実施した調査によると、約3割の大学が、その大学に通った者の半数以上が大学入学から10年後の収入状況について、同世代の高校まで通った者よりも悪いと回答しているなど、大学にかかる費用と便益があっていないと指摘し、足元の高インフレも相まって、2022年春の大学入学者は2020年春から比べて130万人減少したとみられている。

経済紙「エコノミスト」と調査会社ユーガブが2022年8月に行った世論調査では、学生ローン免除に賛成の回答が51%と過半を占める一方で、反対も40%に上っており、今回の債務減免措置への評価は二分している。これは、債務減免措置は高校まで通った者には恩恵がないことに加えて、既に債務を完済した者にとっては不公平なことなどが影響しているものとみられる。このほか、債務免除の政府負担が膨大かつ高インフレも助長させるという指摘や、大学以上の学歴を持つような比較的裕福な者への支援は必要なく、低学歴者などの相対的に支援が必要な者を援助すべきであり、逆進的な政策などの批判がある(「ワシントン・ポスト」紙電子版8月24日)。

足元の調査を見ると、11月の中間選挙に向けて、連邦下院議会の与野党候補への支持が拮抗(きっこう)するなど(2022年9月27日記事参照)、民主党とバイデン政権の支持は上向き傾向にあり、学生ローン減免措置がこれらに今後どう影響していくか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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