米国、預金金利の上昇進まず、平均で年利0.24%にとどまる

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月30日

米国ニューヨーク連邦準備銀行は1121日、政策金利(FF金利)引き上げに対する預金金利への影響についてのレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。レポートは、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めのための急激な政策金利の引き上げに比べ、銀行の預金金利が上昇していないことを指摘した。FRBは政策金利の誘導目標を2022年初の0.000.25%から3.75ポイント引き上げ、現在3.754.00%に設定しているが(2022年11月4日記事参照)、預金金利は11月時点で平均0.24%と、1月時点の0.06%から0.18ポイントの上昇にとどまる。預金金利が低い状況が続くと、預貯金の魅力が薄れるとともに、預金金利以上のインフレ率を見込んで消費が過剰に進み、インフレ抑制が進まない可能性がある。

また、レポートでは、政策金利引き上げに対する預金金利の反応度(注)が近年低下していることも指摘した。2004年の金利引き上げ時には反応度が約60%だったのに対し、2016年は約40%に低下、現在の金利引き上げでは今までのところ約20%にとどまることが示された。FRBは預金金利の上昇が進まない要因として、銀行が必要とする以上に預貯金が集まっている可能性を指摘している。2007年以降、銀行による預貯金資金からの貸し付けは減少傾向にあるが、特に新型コロナウイルスによるパンデミック後は貸付金額の減少が顕著で、構造的変化に起因したものである可能性を示唆している。

米カンザスシティー連邦準備銀行のエスター・ジョージ総裁は「インフレ抑制には、消費より貯蓄を促さなくてはならない」と述べており(ブルームバーグ1122日)、当局者の間でも低調な預金金利を課題視する声が上がる。1124日の感謝祭から年末商戦が本格的に始まったが、アドビのデータによると、感謝祭当日のオンライン小売売上高は前年比約3%増で、過去最高の522,900万ドル(ロイター1125日)と、出だしは好調なもようだ。これまでに積み上がった貯蓄などを背景として、持ちこたえている消費だが、インフレ抑制にとっては悪影響となる面もあり、今後の年末商戦の動向とともに、それがインフレに与える影響にも引き続き留意が必要だ。

(注)例えば、政策金利を50ベーシスポイント(0.5%)引き上げ、預金金利が25ベーシスポイント(0.25%)上昇した場合に、反応度は50%となる。

(宮野慶太)

(米国)

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