オヨーンエルデネ・モンゴル首相がドイツ訪問、レアアースなどでの協力を議論

(モンゴル、ドイツ)

北京発

2022年11月10日

モンゴルのロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相は10月12~15日にドイツを訪問し、14日にオラフ・ショルツ首相と公式会談を行った。モンゴル首相のドイツ訪問は2009年以来約13年ぶり。

モンゴル政府の発表によると、会談では両国関係を「戦略的パートナーシップ」に引き上げることで原則的に合意。国際・地域レベルでの新型コロナウイルス感染拡大状況と地政学的緊張についても意見交換した。

モンゴルは、ドイツを欧州で信頼できるパートナーとして「第3の隣国」(注1)と見なしており、政治、防衛、社会経済、グリーン開発、電子政府など、あらゆる分野で関係を発展させる協力強化について協議した。

モンゴル側は、政府の「Vision2050:モンゴル国家長期開発方針」や「新復興政策」(注2)の枠組みの中で、エネルギー分野で両国の開発・協力を活性化し、2022年6月のG7 サミットで議論されたインフラ投資支援計画(2022年6月28日記事参照)の対象にモンゴルを含めることや、ウムヌゴビ県で建設予定のタワントルゴイ火力発電所、ウランバートル第5火力発電所(注3)など大型プロジェクトへの協力をドイツ側に要請した。

ドイツと連携して産業再生政策を実施することについても意見交換を行い、モンゴル国内での銅精錬所建設や電気自動車(EV)のモーターなどに使用するレアアースの一次加工について、両国で共同研究を開始することを決定した。

さらに、両国政府はモンゴルの「新復興政策」の枠組みで、エネルギー、物流、鉱業、情報技術、都市計画、農牧業、林業など1,000 人のモンゴル人技術者を段階的に育成するプログラムを共同で実施する。また、モンゴルの道路輸送・公共交通における欧州基準の適用について意見交換を行い、両国間の旅客や貨物の輸送に関する協定を正式に締結することに合意した。

(注1)モンゴルはロシアと中国に国境を囲まれており、物理的には第三国に接していないが、外交政策上、日本や欧米などの国を「第3の隣国」と位置づけて、ロシア、中国と同様に重視し、バランスを取る方針としている。

(注2)新型コロナウイルス感染のモンゴル経済に対する影響を緩和し、経済の独立性強化、「Vision2050:モンゴル国家長期開発方針」を実施する基礎条件の整備、発展の制約要因の迅速な解決を目的として、政府が国会に提出した政策で、2021年12月30日に可決された国会決議第106号を指す。発展を制約する6つの主な問題(国境税関、エネルギー、産業、都市・地方、グリーン開発、行政効率)を解決するために、最長10年間にわたって実施する中期目標のプログラムが含まれる。

(注3)「新復興政策」の課題2「エネルギーの復興」の行動計画の中で、タワントルゴイ発電所の建設により、オユトルゴイ銅山の銅精錬工場の電力需要(現在は中国の内モンゴルから輸入)や、ウムヌゴビにある鉱山の電力を自給し、またウランバートル第5火力発電所をウランバートル第3火力発電所のインフラに依拠して建設することにより、増加を続ける首都ウランバートル市の電力・暖房需要に対応することを目標に掲げている。

(藤井一範)

(モンゴル、ドイツ)

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