タイ米USTR代表、「中国への関与準備できていると確信」、非営利団体イベントで主張

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年11月01日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は10月26日、ニューヨークで米中関係全国委員会(NCUSCR、注)が開催したイベントに参加し、対談形式で行われたプログラムの中で、米中関係やバイデン政権による多国間関与政策について語った。

タイ代表は、米中の通商・経済関係は「米国の経済、国民、労働者、ビジネスだけでなく、中国とその経済に、さらには両国経済の規模と重要性から、世界全体にも重大な影響を及ぼす」と指摘した。一方「(米中関係の)現実は理想とはかけ離れている」と述べ、米中間には「激しい競争が起きており、不安定性と脆弱(ぜいじゃく)性が高まっている」との見方を示した。米中の通商・経済関係では、競争の公正性への自信を取り戻す必要があると訴えた。とりわけ、産業界からは中国経済における国有企業の役割や補助金、政府調達に関する懸念が聞かれると言及した。

中国共産党第20回全国代表大会を終え、習近平総書記が再選された中国(2022年10月25日記事参照)について、タイ代表は「重要な変化が起きており、注視している」と述べた。そうした変化が中国政府の人事や政策にどのように反映されるかを見極めるとしつつ、「(中国に)関与するための準備はできていると確信している」と主張した。

他国との通商関係の強化を巡って、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に米国が復帰する可能性を問われた際、タイ代表はその可能性については明確に答えず、バイデン政権が主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF、2022年9月12日記事参照)に触れた。タイ代表は「CPTPPの意義が共通の目標と利益に向けて同盟・パートナー国と協力することであれば、バイデン政権はIPEFを通してそれを実践している」と説いた。また、CPTPPの交渉が行われた時代と現在では文脈が異なると指摘し、IPEFはサプライチェーンの混乱など足元の課題に対処するのに適した枠組みだと唱えた。

米中首脳は両国の協力を否定せず

NCUSCRのイベントには、米国のジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席がそれぞれメッセージを寄せた。バイデン大統領は「米中両国は気候危機への対処や健康安全保障の強化を含む21世紀の世界課題に取り組む重要な役割を持っている」として、特定分野での中国との協力に前向きな姿勢を示すとともに、「バイデン政権は責任を持って両国の競争を管理することに注力している」と従来の主張を繰り返した。習主席は「中米の緊密な意思疎通と協力が世界にさらなる安定と確実性をもたらし、世界の平和と発展を促進することにつながる。中国は相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力に基づき、新しい時代における正しい付き合い方を見つけるために米国と協力する用意がある」と言明した。

(注)米中間の理解促進を目的に1966年に設立された非営利団体。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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