COP27でショルツ首相が演説、脱化石燃料の方針堅持を示す

(ドイツ)

ベルリン発

2022年11月09日

ドイツのオラフ・ショルツ首相は11月7日、エジプトのシャルム・エル・シェイクで同月6~18日に開催されている国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の首脳級会合で演説を行った外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

演説では、地球温暖化を少しずつでも抑制することが「干ばつや洪水、資源紛争、飢餓や不作の減少、ひいては全ての人々の安全と繁栄につながる」と強調。そのため、COP27では、遅くとも2025年までに温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトさせ、2030年までにGHG排出量をほぼ半減させることを目標に、具体的な施策の合意形成が重要だと述べた。

さらに、ドイツは、国際的な気候変動対策に貢献する資金を2021年の年間53億ユーロから2025年までに年間60億ユーロに拡大すると発表。気候変動の影響を最も受けている途上国への「損失と被害」に対応する支援に1億7,000万ユーロ、国際的な気候変動対策の枠組みでの生物多様性の保護対策に2025年までに15億ユーロを拠出することも明らかにした。

自国の気候変動への取り組みに関しては、先進国の中でもいち早くGHG排出量を実質ゼロにする「気候中立」を達成することを目指し、気候中立は2045年までに達成するとしていると述べた。なお、EUはこれを2050年までに達成するとしている(2021年4月22日記事参照)。ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、ドイツはエネルギー不足に備え、石炭火力発電所の一時的な再稼働を余儀なくされているが(注)、「化石燃料のルネサンス(復活)はあってはならない」「先延ばしの言い訳はない」として、脱化石燃料への不退転の姿勢を示した。また、未来のエネルギーは風力発電、太陽光発電、グリーン水素が担うとの見方を示した。

パリ協定の迅速かつ効果的な実施に当たり、2022年6月のG7サミットで議長国ドイツが提唱した「気候クラブ」(2022年6月30日記事参照)の枠組みを活用し、産業の変革で必要となる国際的な協調を推進したいとの意向も示した。

COP27には、ドイツからアンナレーナ・ベアボック外相、ジェニファー・モーガン外務次官兼国際気候政策特使、スベニャ・シュルツェ経済協力・開発相、シュテフィ・レムケ環境・自然保護・原子力安全・消費者保護相、チェム・エズデミル食料・農業相、シュテファン・ベンツェル国務長官(経済・気候保護省を代表)が参加している。

(注)ドイツの気候保護とエネルギー政策の概要、ロシアによるウクライナ侵攻がドイツ政策に与えた影響についての詳細は、2022年9月27日付地域・分析レポートを参照。

(中村容子)

(ドイツ)

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