11月前半のコアインフレ率は前年同期比8.66%、22年ぶりの高水準

(メキシコ)

メキシコ発

2022年11月30日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は11月24日、11月前半の消費者物価上昇(インフレ)率が前年同期比8.14%だったと発表した。10月のインフレ率は前年同期比8.41%で、減少に転じ(2022年11月16日記事参照)、11月前半の数値は7月後半の数値と同水準(8.14%)まで下がった(添付資料図1参照)。

ただし、11月前半のコアインフレ率(注)は前年同期比8.66%と、全体のインフレ率を上回り、2000年8月後半に記録した8.68%以来、22年2カ月半ぶりの高水準となっている(添付資料図2参照)。

11月前半のコアインフレ率(年間)の内訳をみると、「食品・飲料・たばこ」が前年同期比14.10%で、最大の押し上げ要因となっている。次いで寄与度が大きいのは「食品を除く財」で同8.60%だった。「食品・飲料・たばこ」と「食品を除く財」で構成する「財」は前年同期比11.50%で、インフレ率全体を4.57ポイント押し上げた。「サービス」では、レストランや軽食堂、通信、パッケージツアー、医療診察費などを含む「その他サービス」が前年同期比7.58%上昇した。「その他サービス」に「住居関連サービス」(3.10%)、「学校など授業料」(4.49%)を合わせた「サービス」全体としては、前年同期比5.40%だった。一方で、非コアインフレ率は前年同期比6.62%で、10月前半の同7.78%から1.16ポイント減少した。特に「農畜産物」(前年同期比10.59%)と「野菜・果実」(同6.41%)のインフレ率が大幅に低下し、非コアインフレ率の主な引き下げ要因となっている。

11月前半に前期比で物価が上昇した品目を寄与度順にみると、「電気代」(前月末比20.29%)、「航空輸送」(12.93%)、「軽食堂・タコス屋など」(0.53%)、「チレ・セラーノ」(26.11%)、「専門サービス」(10.41%)となっている。電気代は、夏の気温が高い地域は家庭用電気料金の補助率が高くなる夏料金体系が設定されているが、これが10月に終わったために上昇した。航空輸送については、米国の「ブラック・フライデー」に相当する「ブエン・フィン」により、商品の輸送需要が高騰したことによる影響で上昇した可能性がある。また、メキシコ中央銀行のジョナサン・ヘルス副総裁は「コアインフレ率の解釈には注意が必要だ。前年のブエン・フィンの影響が11月前半に出ていたため、11月後半のコアインフレ率は下がるだろう」と自身のツイッターで発言した(「エル・フィナンシエロ」紙11月25日)。ヘルス副総裁はこの発言により、2021年は11月前半だった「ブエン・フィン」が2022年は11月後半にずれ込んだため、2022年のコアインフレ率は11月前半に前年同期比で高くなり、11月下旬は低くなる傾向を示唆した。

中銀は金利引き上げペース落とすことを示唆

総合インフレ率の低下基調に加え、11月後半にはコアインフレ率が下がるとの見通しを受け、中銀のヘラルド・エスキベル副総裁は「メキシコのマクロ経済と金融の安定に影響を及ぼす過度な引き締めリスクがあるため、金利の引き上げペースを落とし始める必要がある」とし、今後の経済成長の見通しについても「金融コストの上昇が企業・金融機関や政府に影響を与え、経済や雇用の成長見通しを悪化させる。」と述べた(「レフォルマ」紙11月25日)。

(注)天候などにより価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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