10月のインフレ率は前年同月比8.41%、2022年5月以来初の低下
(メキシコ)
メキシコ発
2022年11月16日
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は11月9日、10月の消費者物価上昇(インフレ)率は前月末0.57%、前年同月比8.41%だったと発表した。9月のインフレ率が前年同月比8.70%で8月と同率になり、10月に入って減少したことで、2022年5月から続くインフレ率の上昇傾向から反転する可能性を見せている。
しかし、10月のコアインフレ率(注1)は前年同月比8.42%と、インフレ率全体よりも高い数値となっている。コアインフレ率の内訳をみると、「食料・飲料・たばこ」が前年同月比13.95%と最も高く、次いで「食品を除く財」が8.03%となっている。「食料・飲料・たばこ」と「食品を除く財」で構成する「財」は11.15%で、依然として高い上昇傾向が続いている。
非コアインフレ率は、前年同月比8.36%と、9月の同9.96%から下落している。しかし、内訳にある「野菜果実」は前年同月比12.63%、「畜産物」は同15.61%と高い数値を記録しており、「野菜果実」と「畜産物」で構成する「農畜産物」は14.25%で、9月の15.05%を下回ったものの、依然として高い水準で推移している。
10月に物価が上昇した品目を寄与度別にみると、「電気代」(注2)が17.46%、「トマト」が18.80%、「軽食堂・タコス屋など」が0.95%だった。一方、下落した品目は、「LPガス」マイナス7.28%、「イモ類」マイナス16.05%、「タマネギ」マイナス18.39%の順となっている。
エコノミストはインフレ率の継続的な下落に否定的
フィナメックス証券のシニアエコノミスト、ホルヘ・サンチェス氏は「10月のインフレ率(前年同期比)は大幅な低下を記録したが、コアインフレ率が上昇傾向を続けているため、既に下降トレンドに入ったと結論づけるのは時期尚早」と説明した(「エル・フィナンシエロ」紙11月10日)。また、マネックス証券のアナリスト、マルコス・ダニエル・アリアス氏は「9月に横ばいとなった後、10月のインフレ率は過去5ヵ月間で初めて低下し、前年同期の8.70%から8.41%へと低下した。しかし、金利は依然としてかなり高く、中銀の年間目標のインフレ率3.0%±1.0ポイントとはならないため、このインフレ率の減少率ではほとんど変化していない。さらに、コアインフレ率の軌道はほとんど変わっておらず、ついに10月では非コアインフレ率を上回った」と述べている(「エル・エコノミスタ」紙11月10日)。
(注1)天候などにより価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定する公共料金を除いた価格の指数。
(注2)夏の気温が高い地域は家庭用電気料金の補助率が高くなる夏料金体系が設定されているが、これが10月に終わったため。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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